最新記事

対談

バズるにはどうしたらいい? 面白いってどういうこと?【田中泰延×岩下智】

2019年8月23日(金)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

omoshiroibook190823-2.jpg

「いろいろと情報を持っている人のほうが面白い」と言う岩下氏(奥) Newsweek Japan

田中 それは、面白いことを企てようとするときに、外からものを連れてくるっていう部分かな。要するに観察ですよね。スマホなんか見ないで、世の中を見回して、心に余裕を持って発見したものが面白い。これが、基本的に自分と同じなんじゃないかと思いました。面白さって、自分の中からなんて湧いてこないじゃないですか。

岩下 みんな、そういうのがどこかから降ってくると思いがちなんですけど、そう簡単に降ってはこないですよね。どこかで見たものを思い出したり、ニュースで見たものからヒントを得たりしながら、面白さを探していく。

そういう意味で、いろいろと情報を持っている人のほうが面白いことを言えるのかな、とは思いますね。

田中 だから、やっぱり面白いことには、ある程度の知識や教養は必要なんですよ。さっきの「辺野古」とか「公定歩合」とかも、まったく文脈と関係ないから笑いが起こるけど、聞いてるほうにも知識がなかったら面白くない。

そういう意味では、面白いことが言えない人は不注意っていうのもありますね。誰かの発言にしたって何にしたって、いろんなところに面白いことを言うためのネタは転がっているのに、それに気付かない。

ウンコを踏んで臭い人はなぜ面白いのか

岩下 僕は今回、この本の中で「面白い」を法則化してみたんですけど、元々はっきりと意識していたものではなくて、書いているうちにだんだん自分の中で整理できてきて、「こういうことかな」というふうにまとまった感じなんです。

ただ一方で、書いているうちに、いわゆる方法論を書いてもしょうがないんじゃないかって思うようにもなったんです。「ああすれば、こうなる」っていう内容になったらダメだなって気付いた。それで、全体に若干ゆるい内容になっているんですけど(笑)。

そこでぜひお聞きしたいんですが、泰延さんにとっての「面白い」の定義って、どういうものですか?

田中 僕にとっての「面白い」の定義は、「自分を捨てる」ということです。僕は大阪人ですから、バナナの皮があったら率先して滑りにいく奴が面白いんですよ。犬のウンコが落ちていたら率先して踏みにいく奴が面白い。

でも、東京の面白い人とか広告業界の面白い人っていうのは、自分は安全地帯にいる。安全地帯から提示する「面白さ」って、「おしゃれ」に近いんですよ。

岩下 あー。

田中 もっと言うと、自分が死ぬことが最大のオチなんですよ。どんな人間でも最後は死ぬでしょ。つまり、われわれはオチに向かって歩いているわけだから、そのオチを予感させることが笑いになる。

先日、がんで余命告知を受けている写真家の幡野広志さんとネパール取材に行ったんですけど、まずいものを食べたときとか、車が危ない所を走ったときに、「やめて! 寿命が縮まる!」って言うんですよ。こんな恐ろしいギャグ、幡野さん本人しか言えないですよ。

岩下 なるほど。僕のほうは、本の中では辞書に書かれている定義から引っ張ってきて、「人を惹きつける何らかの魅力がある状態」が「面白い」ってことなんじゃないかなと書いていて、確かに定義上はそうなるんですけど、やっぱり人それぞれ違うと思うので、なかなか難しいなぁと改めて思いますね。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中