最新記事

リーダーシップ

自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた

2018年1月19日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

真ん中が「日本一オーラのない監督」こと中竹竜二氏(写真提供:ほぼ日刊イトイ新聞)

<ジェフ・ベゾスのようなカリスマに誰もがなれるわけではないし、カリスマ的リーダーシップには限界もある。いま注目が高まる新しいマネジメントのアプローチ「フォロワーシップ」とは何か>

出世したくても出世できない人や、そもそもリーダーになることに興味のない人がいる一方、「自分は向いていないのに、役職を与えられてしまった......」という人も少なくないだろう。

だが心配はいらない。誰もが、ジェフ・ベゾスや孫正義、馬雲(ジャック・マー)のようなカリスマ的なリーダーにならなければいけないわけではない。リーダーシップの形は1つではなく、強い組織をつくるリーダーには誰でもなれるのだ。

そう主張するのは、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏。リーダーシップにはさまざまなアプローチがあり、なかでも近年有効性が評価されているアプローチが「フォロワーシップ」だ。彼は2000年代前半からその重要性を訴え続けてきた。

早稲田大学ラグビー蹴球部で主将を務め、全国大学選手権で準優勝。大学卒業後、イギリス留学、シンクタンク勤務を経て、2006年、母校の監督になった。現役時代は主将だったがあまり試合に出ておらず、ラグビー指導者の実績もなかったが、「日本一オーラのない監督」と言われながらも全国大学選手権2連覇を達成した。

退任後も、U20(20歳以下)日本代表監督としてワールドラグビーチャンピオンシップでトップ10入りし、企業のリーダー育成に特化したプログラムを提供するチームボックスという会社を設立するなど、多方面で活躍を続けている。日本を代表するラグビー選手の五郎丸歩氏も、尊敬する人物に中竹氏の名前を挙げる。

では、その「フォロワーシップ」とはどんなものだろうか。中竹氏によれば、「組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすること」だ。

日本の企業は長らく、強い牽引力のある言葉で部下に指示し、トップダウンで目標を設定して結果を出すカリスマ的なリーダーを求めてきた。しかし、そんな人物はなかなか現れないうえ、この方法では部下が育たないと、中竹氏は指摘する。

経済が停滞し、情報拡散スピードが速まるなど産業を取り巻く環境が変化している近年、カリスマ的リーダーシップの限界が露呈し、「自ら考える部下」が求められるようになっている。一方、「フォロワーシップ」を科学的に証明する研究が増え、実際に取り入れる企業や組織も増えているという。

その「フォロワーシップ」は、どのようにすれば実践できるのか。ここでは中竹氏の新刊『【新版】リーダーシップからフォロワーシップへ――カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は「第3章 スタイルの確立」より。

◇ ◇ ◇

スキルの習得よりも、スタイルの確立こそが、これからのリーダーに必要な条件である。

そうした前提に基づいて、リーダーシップを発揮する上でのスタイルの必要性を展開していきたい。

自分のスタイルを確立するためには、冷静な自己分析を行い、自己認識を的確にしなければならない。スキルやノウハウといった個別の力をつけることと、実際の現場で自分の本来持っている力を発揮することは、同じではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中