「日本の景気後退回避」「今後は政治巡るリスク」「金利に上昇圧力」...日米15%合意、識者12人の視点
◎不確実性解消、今後は政治・格付け巡るリスクに注目
<OCBC銀行(シンガポール)の為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏>
貿易協定を受けた反射的な反応も見られたが、ドル/円は10─11日ぶりの安値近辺で推移し、おおむね安定している。日本にとって関税を巡る不確実性は解消されたが、ドル/円の今後に関して2つのリスクに注目する。石破茂首相が続投する場合の政治的リスクと、日本の財政状況次第で信用格付けに何らかの変更が生じるリスクだ。
◎関税大幅引き下げは日本にプラス
<オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)の通貨ストラテジスト、キャロル・コング氏>
日本車を含む輸入品に対する関税率を大幅に引き下げるこの合意は、日本にとってプラスとなるだろう。円が短期間かつ小幅に上昇したことは、日米貿易協定が発表前からある程度織り込まれていたことを示唆している可能性がある。
日本の政府支出と借り入れ増加に対する懸念も引き続き円の下落圧力になっている。きょう予定されている40年利付国債入札が円にとって次の変動要因となる可能性がある。
◎日本株に短期的安心材料、相互関税15%は意義深い
<サクソ(シンガポール)のチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏>
打開への期待は低かったため、トランプ大統領の発表はやや上向きのサプライズとなり、日本株に短期的な安心材料を提供した。関税率がこれまで示されていた25%から15%に引き下げられたことは意義深く、特に自動車に関する詳細が依然として重要になるものの、輸出部門のセンチメントを押し上げるはずだ。
5500億ドルの対外直接投資(FDI)というヘッドラインは政治的な駆け引きとしてさほど材料視されないだろう。
今回の合意で日本は目先の関税激化を回避でき、トランプ氏は注意を他に振り向けるとみられる。