「日本の景気後退回避」「今後は政治巡るリスク」「金利に上昇圧力」...日米15%合意、識者12人の視点

2025年7月23日(水)17時38分

◎不確実性解消、今後は政治・格付け巡るリスクに注目

<OCBC銀行(シンガポール)の為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏>

貿易協定を受けた反射的な反応も見られたが、ドル/円は10─11日ぶりの安値近辺で推移し、おおむね安定している。日本にとって関税を巡る不確実性は解消されたが、ドル/円の今後に関して2つのリスクに注目する。石破茂首相が続投する場合の政治的リスクと、日本の財政状況次第で信用格付けに何らかの変更が生じるリスクだ。

◎関税大幅引き下げは日本にプラス

<オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)の通貨ストラテジスト、キャロル・コング氏>

日本車を含む輸入品に対する関税率を大幅に引き下げるこの合意は、日本にとってプラスとなるだろう。円が短期間かつ小幅に上昇したことは、日米貿易協定が発表前からある程度織り込まれていたことを示唆している可能性がある。

日本の政府支出と借り入れ増加に対する懸念も引き続き円の下落圧力になっている。きょう予定されている40年利付国債入札が円にとって次の変動要因となる可能性がある。

◎日本株に短期的安心材料、相互関税15%は意義深い

<サクソ(シンガポール)のチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏>

打開への期待は低かったため、トランプ大統領の発表はやや上向きのサプライズとなり、日本株に短期的な安心材料を提供した。関税率がこれまで示されていた25%から15%に引き下げられたことは意義深く、特に自動車に関する詳細が依然として重要になるものの、輸出部門のセンチメントを押し上げるはずだ。

5500億ドルの対外直接投資(FDI)というヘッドラインは政治的な駆け引きとしてさほど材料視されないだろう。

今回の合意で日本は目先の関税激化を回避でき、トランプ氏は注意を他に振り向けるとみられる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国主席、APEC首脳会議で多国間貿易保護訴え 日

ビジネス

米国株式市場・序盤=ナスダック1.5%高、アップル

ビジネス

利下げでFRB信認揺らぐ恐れ、インフレリスク残存=

ビジネス

ECB、金利変更の選択肢残すべき リスクに対応=仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中