「日本の景気後退回避」「今後は政治巡るリスク」「金利に上昇圧力」...日米15%合意、識者12人の視点

2025年7月23日(水)17時38分

◎買い戻し先行、為替動向には目配り必要

<りそなアセットマネジメント ファンドマネージャー 戸田浩司氏>

ひとまず全体市場にポジティブな反応が見込まれ、ショートカバー(買い戻し)が先行しそうだ。個別関税まで含めて決着したのか判然としないが、自動車株なども、これまで空売りがあったことも踏まえると、ひとまず買い戻しが優位になるのではないか。

ただ、買い戻し以上に上値を買っていいかはまだ判断できない。新たな買いポジションを構築するには、内容やその影響を精査する必要がある。

日銀の政策判断への制約が、日米関税交渉の観点からは緩和する可能性があり、利上げへの市場の観測が高まってくるかもしれない。為替の動向には注意が必要になる。

◎日銀利上げ観測と財政懸念で金利に上昇圧力

<三井住友トラスト・アセットマネジメント シニアストラテジスト 稲留克俊氏>

トランプ米大統領による日米関税交渉で大規模合意との発表は、日本国債市場では主に2つのルートから売り(金利は上昇)圧力となると考えられる。

1つ目は、関税を巡る不確実性を理由にいったん慎重化していた日銀による利上げの思惑が高まることだ。関税を巡る不確実性が低下したとなれば、政策金利の影響を受けやすい中期債利回りに上昇圧力がかかるだろう。

2つ目は、石破首相の退陣が意識されることで財政懸念から超長期金利に上昇圧力がかかるというルートだ。けさの読売新聞によると、自民党総裁である石破首相は「米関税措置を巡る日米協議の進展状況を見極め、近く進退を判断する意向」という。今回のトランプ大統領の発表で関税の成否がみえた、となれば石破首相が退陣する可能性があり、財政拡張懸念から超長期国債の売り材料となる。

このほか、リスクオフ(投資家のリスク回避姿勢)の緩和に伴う「株高、債券安」という面ももちろんあるだろう。

ただ、1点気になるのは「日本が米国に5500億ドルを投資し、利益の90%を米国が受け取る」という部分だ。日本の成長率下押しにつながる可能性はないのか、単純に相互関税が25%から15%に引き下げられて良かったということでいいのか、今後詳細を確認する必要があると思う。

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