「日本の景気後退回避」「今後は政治巡るリスク」「金利に上昇圧力」...日米15%合意、識者12人の視点
◎日銀の想定内、企業収益悪くなければ10月利上げも
<SBI新生銀行 シニアエコノミスト 森翔太郎氏>
相互関税が10%を上回るのはやむを得ないとの視点に立てば、15%での妥結は及第点と言える。
日銀の植田和男総裁はかつて10%超の関税を想定していると発言していたので、15%なら日銀が想定する範囲内とみられ、7月の展望リポートでは経済・物価見通しに大きな影響はないだろう。
利上げ時期を巡っては、関税がどういう税率で着地するかという点とその後に経済・物価・賃上げ機運にどう影響するかの2つの不確実性があった。今回関税率は決着したが、実際にどういった影響があるかは8月以降に発表される4―6月期の実質国内総生産(GDP)や法人企業統計などを見ていく必要がある。4―6月の特に企業収益がそれほど悪くなければ、10月に利上げに踏み切る可能性もあるのではないか。
◎日銀はしばらく様子見、国内政局が新たな不確実性に
<野村証券 エグゼクティブ金利ストラテジスト 岩下真理氏>
5月の日銀展望リポートでは米関税の前提を10―24%の真ん中で置いていたとみられ、15%での合意であれば7月の展望リポートでは成長率見通しを下方修正しなくていいのではないか。ただ、日本にとっての「霧」は少し晴れたが、ユーロ圏など他の国や地域はまだ交渉が続いている。日銀は不確実性が「極めて高い」としてきた。今回の合意で「極めて」は取ってもいいと思うが、不確実性はまだ残っている。
国内政局の混迷が新たな不確実性として浮上しており、日銀の金融政策はしばらく様子見ではないか。石破茂首相が辞任した場合、昨年の自民党総裁選に立候補した議員らが再び立候補するなら、誰がなっても財政拡張に行かざるを得ないだろう。連立政権を組み替えるとしても、財政出動に偏りやすい。金利が低下するシナリオが描きにくい状況。
経済の下振れリスクが残る中、物価の上振れだけでは日銀はすぐに動けない。利上げに追い込まれるとすれば円安の定着だが、今のところ為替はそういう動きになっていない。