最新記事
コメ不足

コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治家・農水省・JA農協の歪んだ関係

2025年4月10日(木)14時28分
山下 一仁 (キヤノングローバル戦略研究所研究主幹) *PRESIDENT Onlineからの転載
コメ不足なのに、農水省が「減反」をやめようとしない理由...政治家・農水省・JA農協の歪んだ関係

gontabunta -shutterstock-

<最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産と輸出である。欧米にはない「特殊な組織」であるJA農協が「減反政策」で発展するカラクリとは?>

なぜコメの値段は下がらないのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、「価格高騰の根本原因は、減反政策による生産量の減少だ。価格を下げるには減反政策を廃止すべきだが、JA農協がある限り、それはできないだろう」という──。


ウソをつき続ける農林水産省

農林水産省は昨年夏、長年続いた減反による生産量の減少と猛暑の影響で深刻なコメ不足を招いた際、卸売業者がため込んでいるという虚偽の主張を行い、何の対策も講じなかった。昨年8月には「新米が出回ると価格が低下する」と主張したが、価格は逆に史上最高値まで上昇している。

価格が上がるのは、需要に対して供給が足りないからだ。

この経済学の基本を無視して、農林水産省は投機目的で業者が21万トンものコメをため込んでいるからだという虚偽の主張を繰り返している。

農林水産省がかたくなにコメ不足を認めないのは、備蓄米を放出して米価を下げたくないからだ。官邸筋から言われてしぶしぶ備蓄米放出に応じたものの、卸や小売業者ではなく集荷業者のJA農協に売却したり、1年後に買い戻す条件を付けたりして、放出しても米価が下がらない仕組みを考えた。

それにしても、国民・消費者を敵に回してまで、なぜ農林水産省は米価を下げたくないのか?

それは農家のためではない。高い米価で利益を得ている特殊な組織のためである。

座談会
「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事、大幅利下げを再要求 経済のシフト

ワールド

トランプ氏のガザ調停案、イスラム圏8カ国と相違=パ

ワールド

トランプ氏、ハマスに5日夕までの合意を要求 ガザ和

ビジネス

IMF報告書、国家産業政策はリスク伴うと指摘 米国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中