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エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情

OVERSEAS REAL ESTATE

2024年8月31日(土)15時20分
藤田岳人(本誌記者)

購入したのは10年以上前で、「その後にニュージーランド地震で一部が被災したが、被災した建物も保険で建て直せた」こともあって、現在は「購入した時の2~3倍ほどの価値になっている」という。ただ、「日本で保有している不動産は購入した時期がバブル崩壊直後だったこともあるが、価値が5~6倍になっている」ため、海外不動産で特に大きな利益が出たと言えるかは微妙なところのようだ。

また海外不動産には日本とは違う難しさがあると言う。「まず契約の確認が難しい。記載内容が適切か否かもだが、記載すべきことがしっかり記載されているかなどの確認も現地の弁護士を交えて検討する必要がある。また、われわれが現地に常にいるわけではないので物件の現状把握が難しい」。

契約が日本以上に重視され、また自分にとってなじみが薄い国で、そこに不備やトラブルがあれば、対応の難易度は格段に高くなる。


それでも富裕層ならではの人や情報のつながり、そして豊富な資金力もあって、この人物は大きなトラブルもなく海外不動産投資から安定した利益を得ることができている。

では、そこまでの特別な背景のない投資家は海外不動産をどう見ているのだろうか。

エリート会社員が経験したマレーシア投資の「大誤算」

大手企業に勤める40代のサラリーマンが、10年ほど前にマレーシア最南端ジョホール州にマンションの一室を購入したのは、「自宅の購入後に余った資金をどうするか考え、もともと不動産が好きだったこともあって海外不動産に興味を持った」からだった。

インターネットなどで情報収集したところ、「ジョホールバルはシンガポールからすぐ近くという立地の良さが魅力で、中国企業も巨額の投資をして不動産開発を進めている」ことを知った。「高速鉄道が通る計画があるとの情報もあり、もしシンガポール並みに発展すればすごいことになるのではないかと思った」

確かにジョホール州では、中国最大手の不動産会社「碧桂園(カントリーガーデン)」が約15兆円を投じて、人工島に数十のタワマンやオフィスビル、商業施設などを建設する「フォレストシティー」という超巨大プロジェクトを14年に開始。シンガポールの発展を支える労働力を供給するマレーシア南部の開発は大きな注目を集めていたため、投資資金の1600万円が大きなリターンをもたらしてくれると期待したと言う。

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