最新記事
製造業

災害・有事で「経済を止めない」ために...「1日で対応」実現するサプライチェーン強靭化戦略

2024年6月28日(金)12時21分
西田嘉孝
工場火災

写真はイメージです Oxanaso-shutterstock

<仮に災害でサプライヤーが被災しても、即座に状況把握、代替品供給ができるようになる――。電材メーカーのパナソニック エレクトリックワークス社が導入した先進的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)システムとは>

配線や照明器具から純水素型燃料電池まで、幅広い電設資材を扱うパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)は、2020年にサプライチェーンの「途絶」を経験した。大手サプライヤーの火災により、約1年半にわたり一部製品の供給がストップしたのだ。

「お客様にご迷惑をかけた反省から、リスクマネジメントについての検討を行いました」と、同社サプライチェーン統括センターの森下賢治所長は言う。

こうしたサプライチェーン上のリスク管理は、なにも製造業1社だけが抱える課題ではない。昨今は、世界経済に大きな影響を与えたコロナ禍における物流遮断や、先行きの見えない不安定な国際情勢を背景に、経済を止めないため、人々の生活を守るために、その重要性がますます高まっている。

今年1月にも、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生した。とりわけ地震の多い日本では、いつどの地域が震災被害に遭ってもおかしくない。さらには集中豪雨による水害など、自然災害で各地が想定外の被害を受けるケースも増えている。

有事においても安定的な供給を実現するための、サプライチェーンのレジリエンス(回復力)強化。それを達成する手法として各社で導入が進むのが、SCM(サプライチェーン・マネジメント)だ。

パナソニック エレクトリックワークス社の大瀧清社長

パナソニック エレクトリックワークス社の大瀧清社長 Newsweek Japan

平均10日から3日に短縮、しかし課題もあった

先進的なSCMの構築を進めてきたパナソニックEW社は、今年4月、「EW-Resi.(EWレジ)」と呼ぶシステムを導入した。

「ここ数年、当社では有事でも供給をストップさせず、需要にお応えして安定的な供給を続けるためのSCMオペレーション構築に取り組んできました」

5月末、パナソニックセンター東京(有明)での記者発表会でそう話したのは、同社の大瀧清社長。大瀧氏によると、目指すサプライチェーン強靭化の取り組みは、パナソニックグループが提唱するPX(Panasonic Transformation)の具体的な活動の1つだという。

「PXでは、私たちが磨き上げてきた現場の強みを最大限に生かし、現場の行動変容につながる『現場ドリブンDX』として活動を位置付けています。お客様の情報を起点に、バリューチェーン全体の整流化、省力化、自動化を実現していきます。

例えば、『営業DX』では顧客接点強化によるソリューション提案力の持続的強化、『ものづくりDX』では高品質で生産性の高いスマートファクトリーの実現、そして本日の主題となる『SCM-DX』では、EW-Resi.の導入によりサプライチェーンの強靭化を実現し、設備インフラ事業者としての社会的責任を果たしていきます」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB当局者、来年利下げは1回が中心 幅広く意見分

ビジネス

米FOMC声明全文

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRBが3会合連続で0.25%利下げ、反対3票 緩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中