大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなアメリカンドリームの現実「学歴社会」に待ったの兆し
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<米社会では大学の学位がなければチャンスも与えられない。そんな現実に異議を唱え、実力主義の抜擢を行う会社がでてきた>
いくら頑張っても、アメリカンドリームには手が届かない。そんな人がたくさんいる。
貧富の格差は広がるばかりで、しかも 「大卒未満」では成功への第一歩すら踏み出せない今のアメリカ社会で、いったい労働者はどうやって家族を養い、家を買い、貯蓄に励んだらいいのか?
この問いに向き合い、なんとか答えを探ろうとしたのが、パレスチナ自治区のガザ出身でユダヤ・インド系アメリカ人のバティア・アンガー サーゴン(本誌米国版の編集者でもある)の新著『二等市民 エリート層はいかにしてアメリカの労働者を裏切ったか(Second Class: How the Elites Betrayed Americaʼs Working Men and Women)』だ。以下はその抜粋。
ニコール・デイには、職探しに苦労した記憶がない。そもそも「働かない」という選択肢はなかった。
いつだって自分と、自分の息子のために働いてきた。バーテンダー、事務仕事のマネジャー、ベビーシッター、犯罪者の社会復帰を支援する施設のコーディネーターも。しかし最近は、およそ「まともな」仕事は見つからない。大学の卒業証書がないと、まともな仕事に就けないからだ。
大学で教わるスキルなど必要ない仕事でもそうだ。学位がないというだけで昇進できず、職を追われたことも一度ならずある。
「大卒の資格がない人には、ある人ほどのチャンスが与えられない」と、 ニコールは言った。「頭では理解できる。でも納得はできない。私たちには(大卒者と)同じくらいの知性があり、仕事で結果を出してきた実績もあるのに」
ニコールは学歴による社会的分断の犠牲者だ。今のアメリカは大学教育を受けた人物をあらゆる手で優遇し、特に学位など必要としないはずの職種でも、ベストな地位や待遇は大卒者のみに用意されている。
「私たちには自分の力を認めてもらうチャンスがない。チャンスがあっても無視される」と、ニコールは言う。
「同じ会社で5年、10年働いて、ようやく昇進のチャンスが巡ってきても、会社はたいてい、経験はなくても大卒資格のある人間を採用したがる。私たちみたいな、たたき上げじゃなくてね」
越え難い壁が立ちはだかる学歴という名の「ガラスの天井」は実在する。しかもインターネットを通じた人材採用の自動化によって、事態はますます悪化している。私が話を聞いた労働者階級の多くの人そして最も成功している人々にとっ ても、学歴は越え難い壁だ。