最新記事

世界経済

展望2023:ウクライナ戦争がもたらした穀物やオイルシードの不足 食品価格の上昇続く

2022年12月26日(月)13時34分

トウモロコシと大豆の価格は過去10年間で最高値に上昇。マレーシアのパーム油の指標価格も3月に過去最高を記録した。

その後、世界的な景気後退への懸念や、中国の新型コロナウイルス感染拡大に伴う規制、ウクライナの穀物輸出を巡る黒海回廊の延長などを背景に、小麦の価格は侵攻前の水準まで下がり、パーム油も約40%の値下がりを見せている。

2023年の展望は

世界第2位の小麦輸出量を誇るオーストラリアでは、最近の洪水により収穫間際の作物が広範囲で被害を受けた。一方、アルゼンチンでは、干ばつによって小麦の生産量が4割近く減ると推測されている。

これらの影響から、2023年上半期に手に入る小麦は世界的に減少するとみられる。

米国の平野部では、雨不足で冬作物の評価が2012年以来の最低水準に落ち込んでおり、下半期の供給を痛めつける可能性もある。

コメの価格については、世界最大の供給国であるインドが2022年初めから課している輸出税が続く限り、高止まりするとみられる。

「多くの輸出国でコメの入手可能量がかなり限られている一方、唯一量を確保できているインドでは輸出税を設けて販売量を抑えている」とシンガポールに拠点を置く国際貿易会社のトレイダーは分析する。

「輸出入で上位を占める国のいずれかが生産の面で打撃を受けた場合、相場を大きく押し上げる要素となり得る」

2023年初の南米でのトウモロコシと大豆の生産見通しは明るいと見られているものの、豆類の最大輸出国であるブラジルは近年水不足に陥っており、懸念材料となっている。

米農務省によると、トウモロコシや大豆、小麦といった主要穀物の米国内での供給は、2023年にかけても低迷し続けると予測されている。

同省は、米国のトウモロコシ供給量が2023年の収穫前に10年ぶりの低水準に下落すると予測。大豆の在庫は7年ぶり、小麦の期末在庫は15年ぶりの低水準になるとの見通しが出された。

食用油として世界で最も消費されているパーム油は、東南アジアにおける熱帯低気圧の被害を受けている。同地域では高コストから化学肥料の使用量を比較的抑える傾向がある。

だが、インドや中国、ブラジルなど複数の国では、穀物価格の高騰が農家の作付け強化の後押しとなっている。

オレ氏は「複数の国で作付面積が拡大している一方、悪天候などの原因から生産高は引き続き落ち込んだままだろう。大幅に低下した供給を補充するほどの生産量には満たないとみられる」と指摘する。

By Naveen Thukral

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中