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軽自動車でもEVはまだぜいたく品? 買っていい人、やめた方がいい人の条件とは

2022年8月21日(日)12時40分
山崎 明(マーケティング/ブランディングコンサルタント) *PRESIDENT Onlineからの転載

藤沢市役所の急速充電器は44kWの出力で、理論上は30分で最大22kWhの充電が可能だ。サクラのバッテリーは20kWhなので満充電までできそうだが、そうは問屋が卸さない。サクラは最大30kWまでの充電にしか対応していないのだ。従って、どんなに高出力の充電器でも、30分で充電できるのは最大15kWhということになる。

実際には50%を超えるくらいからバッテリー保護の観点から出力を車両側で制限するようで、最初は30kWという最大値で充電できていたものの、最後は15kW程度まで落ちていた。最終的に充電できたのは約12kWhで、おそらくこれがサクラでの30分の急速充電の最大値ではないかと思われる。

バッテリー残量は72%、走行可能距離は100kmとなった。もし自宅に普通充電器を設置すれば、200V/15Aで出力3kWなので、ゼロからでも7~8時間で満充電にできる。

高齢者でも乗り降りは容易

この日、サクラの美点がもう1つ明らかになった。軽ハイトワゴンなら当たり前のことかもしれないが、高齢者を乗せるのがきわめて容易なのである。

今まで高齢の母を法事や墓参りに連れて行く場合、寺のある港区赤坂まで50kmくらいあるのでBMWを使っていた。旧型BMW1シリーズは着座位置が低く、サイドシルも高いので高齢者には非常に乗り降りしにくい車だ。

前述の通り、サクラの走りは素晴らしく、もしサクラに買い換えたなら母を連れた墓参りはこの車で行くことになるのでは、と頭をよぎったのである。そこで翌日の日曜日に「墓参りシミュレーション」を行うことにしたのである。

満充電なら往復可能かどうかをシミュレーションしたかったので、翌朝改めて藤沢市役所で充電を行った。バッテリー残量72%からのスタートだったが、やはり出力制限がかかるため100%には至らず、97%で充電は終了した。走行可能距離は123kmである。

藤沢―赤坂の往復は問題なし

赤坂までの道のりであるが、横浜新道から第三京浜を経由し、目黒通りで都心に向かうといういつも使っているルートを走行した。日曜の朝ゆえ、まったく渋滞なく約1時間で到着した。

横浜新道と目黒通りは流れに任せて、第三京浜はクルーズコントロールを80km/hに設定して走行した。目黒通りではBEVらしい軽快な発進加速で、容易にタクシーを置き去りにすることができるくらいだった。

赤坂の寺に到着した時点で走行距離51km、バッテリー残量60%、走行可能距離90kmと表示された。電費は8km/kWhという優秀な値である。片道で40%の消費なので、十分無充電で帰宅できそうな数字である。

実際そのまま帰宅したが(帰路は銀座から首都高速に乗って横浜新道を経由するルート)自宅に到着したときのバッテリー残量は17%、走行可能距離29kmと、余裕を持って東京往復が達成できた。エアコンが不要な時期であればもっと余裕のある結果となっただろう。

複数台の「充電待ち」は苦痛

ホームセンターで充電する日産サクラ

充電待ちを回避し、ホームセンターに移動して充電する  写真提供=筆者

翌月曜日は横浜の日産本社まで返却に行かなければならないので、充電のため再び藤沢市役所に向かった。するとなんと1台が充電中なだけでなく、さらに2台充電待ちのBEVがいたのである!

30分+30分+30分で、順番が回ってくるまで1時間半もかかってしまう。大船のホームセンターに急速充電器があることを思い出し、行ってみることにした。

こちらは幸いすぐに充電可能で、買い物をしている間に充電完了できた。ただし、ここにある急速充電器は出力が20kWと、藤沢市役所の半分以下だ。理論的にも最大で10kWhしか充電できない。

結局ここで充電できたのは8.7kWhで、バッテリー残量は55%、走行可能距離は84kmまでの回復にとどまった。

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