最新記事

経済制裁

SWIFT排除の制裁、ロシア経済に壊滅的打撃となるか

2022年2月28日(月)13時59分
SWIFTのロゴと、ロシアとEUの旗のイメージ

西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。捨身はSWIFTのロゴと、ロシアとEUの旗のイメージ。26日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。西側が制裁をさらに拡大する余地を残している点も重要だ。

SWIFTは国境を越えた迅速な決済を可能にするメッセージシステム(ネットワーク)で、国際貿易の主要な決済手段となっている。

SWIFTから排除されたロシアの銀行は、友好国の中国などを含めて国外銀行とのやりとりが困難になり、円滑な貿易取引が難しくなり決済手続きコストが上昇するとみられている。

西側諸国は、ロシア中央銀行によるルーブルの買い支え能力を制限する措置も約束している。ただ、SWIFTの排除対象となる銀行名はまだ明らかにされていない。専門家は、どの銀行を対象にするかによって、この措置の効果は大きく左右されると言う。

「悪魔は細部に宿る。どの銀行が選ばれるか見守ろう」と言うのは、アトランティック・カウンシルのユーラシア・センターに所属する経済制裁専門家、エドワード・フィッシュマン氏だ。

同氏は、ズベルバンクやVTB、ガスプロムバンクといったロシア最大級の銀行が対象に入れば「決定的な大打撃となる」とツイッターに記した。

ズベルバンクとVTBは先に、どんな展開にも備えていると表明した。

金融情報についての訓練プログラムを提供する企業を営むキム・マンチェスター氏は、SWIFTからのロシア排除について「まさにロシアの銀行の急所に切り込む」対応だと指摘する。

マンチェスター氏によると、バイデン米大統領はこれまで制裁対象を選別してきたため、今後さらに多くの銀行を排除し、最終的には一律排除して制裁を強める余地がある。「移動弾幕射撃」のようなものだという。

ロシア経済に壊滅的打撃

SWIFTからのロシア排除は、同国の経済と市場に壊滅的な打撃をもたらす可能性がある。

ロシア中銀の元副会長で今は米国在住のセルゲイ・アレクサシェンコ氏は、28日に市場が開くと通貨ルーブルは暴落し、ロシアへの多くの輸入が途絶えることになると予想。「(ロシア)経済の大きな部分が終わりを迎える。最終消費に関連した市場の半分が消滅するだろう。支払いができないとなれば、消費財は姿を消すことになる」と語った。

もっとも、あるロシアの元銀行幹部は、排除の対象が既に制裁を受けている銀行に限られたり、ロシア中銀が資産を別の場所に移す時間的余裕を与えられたりすれば、制裁の効果は鈍りかねないと言う。

「既に制裁を受けている銀行であれば、これまでと大して変わらない。しかし、ロシアの上位30行が対象となれば、話は全く違ってくる」と説明。西側諸国の発表は「非常に大々的なものに聞こえ、だれもが大喜びしているが、現実には政治的な発表だ」と述べた。

先に米国が発表したズベルバンクやVTBなど数行への制裁は、ロシアの金融機関による外為取引(1日460億ドル程度)の大半に直接照準を定めた対応だ。ロシアにある銀行資産の約8割が標的となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中