最新記事

ビジネス

EU、環境とデジタル関連の標準化システム改定へ SDGsやDXで世界けん引狙う

2022年2月3日(木)12時16分
EUの旗

欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会は環境とデジタル製品や技術を対象とした標準化システムを改定することを提案した。中国など他国の基準に依存するのではなく、今後の世界標準の設定を確実にするのが狙い。写真は2015年10月、ブリュッセルで撮影(2022年 ロイター/Francois Lenoir)

欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会は2日、環境とデジタル製品や技術を対象とした標準化システムを改定することを提案した。中国など他国の基準に依存するのではなく、今後の世界標準の設定を確実にするのが狙い。

EUは家電製品から玩具に至るまで既に製品の基準を設けているが、製品の安全性や相互の運用性を超えて環境や労働基準、民主主義の価値観を含めた環境やデジタルへの移行の標準化システムを求めている。

ブルトン欧州委員(域内市場担当)は「技術標準は戦略的に重要だ。欧州が技術的主権を握り、依存を減らし、EUの価値観を保護するには、世界的な標準化ができるかどうかにかかっている」と表明した。

クリーンな燃料としての水素の利用、バッテリーやモノのインターネット接続、人工知能(AI)の生産拡大は環境や労働基準、データ保護、サイバーセキュリティーなどへの問題を提起する。

EU当局者は、中国が昨年末に公表した標準化に関する新戦略を指摘し、EUがより迅速に行動し、他の「志を同じくする」国々と協力する必要性を浮き彫りにしているとの見解を示した。

また、欧州委は近隣諸国やアフリカでの標準化プロジェクトにも資金を提供する。

欧州委の提案は、新型コロナウイルスのワクチンや医薬品、重要な原材料のリサイクル、クリーン水素、低炭素セメント、半導体、データについてより多くの基準をより迅速に設定することを求めている。

EU当局者によると、規格の策定には4─6年かかる。

欧州委の提案は、EUが研究・イノベーションを支援、促進する事業「ホライズン・ヨーロッパ」から資金提供を受けているプロジェクトを標準化の目的と整合させるもの。同時に、多くの専門家が定年間近になっているのを受けて若者のキャリアの機会としても推進を図る。

この提案は、サイバーセキュリティーや水素などの分野でEU域外の企業や団体の影響力を制限するため、EU加盟27カ国の国家機関に標準設定に関するより強い発言力を与えることにもなる。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、鉄鋼関税50%に引き上げ表明 6月4日

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中