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日本企業の生産意欲、リーマンショック以来の「弱気」 コロナ禍の正常化なお遠く

2021年12月28日(火)16時45分
川崎市の工業地帯

企業の生産計画をどう判断するか指数化したアニマルスピリッツ指標(DI)が低迷している。2017年1月、神奈川県川崎市で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

企業の生産計画をどう判断するか指数化したアニマルスピリッツ指標(DI)が低迷している。将来予測を含め移動平均でみたDIはリーマン危機後の2009年2月調査以来の低水準で、正常化にはなお遠い。オミクロン株の影響も十分に反映しきれておらず、年明け以降も生産が回復基調を続けられるかは不透明感が漂う。

アニマルスピリッツ指標は、経済産業省が鉱工業生産指数と併せて公表している。月次で集計している企業の生産計画について、前月時点から引き上げた場合を「強気」と位置づけ、逆に引き下げれば「弱気」となる。

指標は、輸送用機械や生産用機械など各品目の生産金額上位8割までを調査対象の目安として集計。強気と弱気の差から弾き出すDIがプラスなら、強気な企業が増えたことを示す。弱気に傾けばDIはマイナスとなる。

新たに公表した12月調査では、原系列のDIがマイナス5.5と、先月のマイナス10.2からは改善した。強気な企業が26.6%だったのに対し、弱気は32.1%にとどまった。ただ、将来予測も含め、移動平均でみた「トレンド」ではマイナス17.4と、11月調査のマイナス15.5をさらに下回った。

公表された指標は2009年2月調査(マイナス23.0)以来のマイナス幅で「東南アジアからの部品供給不足の影響などから、企業の生産活動が『弱気』なままにとどまっている」と、経産省の担当者は話す。

予測補正値は4カ月ぶりマイナス

同省によると、製造工業生産予測指数の先行きを試算した「補正値」は12月にマイナス1.3%となり、今年8月以来4カ月ぶりのマイナスとなった。

コロナ禍で通常より上下に振れやすい現状を踏まえ、予測調査(プラス1.6%)に対してマイナス補正幅は3%弱と、目安とされる2%程度よりも大きいものの「オミクロン株の影響を十分に織り込みきれていない」と、別の政府関係者は語る。

28日発表された11月の鉱工業生産指数そのものは前月比プラス7.2%と、伸び率は比較可能な13年2月以降で最大だった。自動車の急回復が主因で、10―12月期見通しでは「前期比プラス1%台と、2四半期ぶりの増産が見込まれる」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長)との見方が多い。

ただ、オミクロン株の影響を十分に反映しきれない現状では「年明け以降も供給制約で生産が下振れするリスクはつきまとう」(農林中金総合研究所の南武志・主席研究員)。

日本総研の下田裕介・主任研究員は「自動車の挽回生産が期待される一方で不透明要因も多く、先行き予測値が結果として下振れることは十分あり得る」と話している。

(山口貴也、金子かおり 編集:橋本浩)

[ロイター]


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