最新記事

日本経済

中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか

2021年3月6日(土)12時17分
劉 瀟瀟(三菱総合研究所研究員) *東洋経済オンラインからの転載

訪日中国人富裕層に人気も高かった隈研吾氏デザインの東大内のカフェ(写真:筆者撮影)

世界でワクチン接種が始まっている今、オリンピックなど、観光産業の復興についての議論が再び視野に入ってきた。特に日本の観光産業を支えてきたと言っても過言ではないインバウンドはコロナ禍で一気に蒸発し、日本の観光産業に大きくダメージを与えている。

2014年からインバウンド、特に訪日中国人富裕層の動向を研究している筆者が知っている範囲でも、多くの企業や自治体が、消費金額と影響力が高い訪日中国人富裕層の誘致に取り組む予定だったのが、コロナ禍のため頓挫してしまい、「これからも来てくれるのか」と不安に思っている。

そこで今回は、中国の大都市に居住する若い富裕層(20~30代、世帯年収3000万円以上、資産2億円以上)9人にインタビューを実施。彼らは欧米への留学経験があるエリート層で、親日でもあり、日本の観光業にとっては欠かせない層である。さらにインタビューと合わせて、コロナが落ち着きつつある中国国内の観光事情も紹介する。

コロナ前の状態に戻りつつある

日本ではまだまだ待ち遠しい「旅行」だが、中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にある。春節で移動は制限されたものの、40日間で延べ17億人が移動したと報じられている。

今年の春節の移動者数はコロナ流行前の2019年と比べると4割程度少ないが、北京市の旅行収入は2020年の2.9倍になった。また、中国の真南に位置する海南島の離島免税品(中国国内にいながら買える免税品)売り上げは前年に比べ261%増の9億9700万元(約158億円)になった。徐々にコロナ前の状態に戻ってきていることがうかがえる。

富裕層たちへのインタビューによれば、昨年の初夏から今まで通りに国内旅行・出張をするようになったが、コロナ以前と比較すると大きく3つの変化が見られたようだ。

その1つ目は、中国国内のホテルや周辺の観光施設のレベルアップが著しいことだ。コロナ感染への心配もあり、最近の中国人はホテル内で楽しむ傾向が高い。上海や広州など大都市はもちろん、雲南省、四川省、福建省といった地方都市への関心もますます高くなっている。

富裕層を代表する旅行ブロガーのLulu氏は、「(仕事で世界中のいいホテル、リゾートに泊まっているが)この1、2年、国内のホテルのレベルアップは速い」と話す。特に中国国内のホテルのいちばんの弱点である「美意識」や「デザイン」が、近年海外でデザインの仕事をして帰国したデザイナーや、海外のデザインチームに発注することで改善されつつある。

中国人は世代と居住地の違いによって美意識に大きなギャップがある。50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む。一方、無印良品のブランドを冠する「MUJIホテル」のような、「わびさび」の日本文化と美意識は若い世代に強く影響を与えている。そのため若い人たちは洗練されたデザイン(日本・先進国で称賛されたテイスト)を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ。

インテリアも購入できる高級ホテル

富裕層やブロガーの中で人気がある、雲南省のHyllaはその一例である。部屋から観光名所の玉龍雪山の絶景雲海が見えるよい立地にあるだけでなく、コンセプトからインテリアまで徹底的に若い世代の富裕層のニーズを意識して設計されている。

例えば、Hyllaにはアンティークの家具を扱うパートナーがいる。高価なSirocco chair、The Spanish Chair、ルイスポールセンのフロアランプ、イサム・ノグチのテーブル......、と、洗練された空間で宿泊客を魅了しているのだ。

なお、部屋ごとにデザインが異なり、気に入った家具・インテリアがあったら宿泊者は購入することも可能だ。

newsweek20210305_1.jpgこうしたショールーム型のホテルは北欧や日本でも少しずつ増えている。高級で洗練されたセンスが良い家具やインテリアの使用感を試してみたい中国人富裕層にとっては嬉しいサービスである。

また、ホテルに泊まるたびにインテリアが販売されるため、部屋のデザインも変化している。そのためリピーターになりやすい。

つまり、週末や小旅行なら中国国内でも満足できそうな状況になりつつあるのだ。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア、イランの衛星打ち上げ ウクライナで利用との

ワールド

仏ワイン生産、今年は回復見通し 干ばつが抑制も

ワールド

中国廊坊市、住宅購入制限を全廃 需要喚起狙い

ワールド

中国の軍事演習、台湾侵略作戦の一環=台湾外相

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:世界が称賛する日本の暮らし

2022年8月 9日/2022年8月16日号(8/ 2発売)

治安、医療、食文化、教育、住環境......。日本人が気付かない日本の魅力

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

  • 2

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世界的な著名精神科医が指摘するある『行動』とは

  • 3

    【動画】6つの刃でアルカイダ最高指導者の身体を切り裂いた「ニンジャ爆弾」

  • 4

    台湾有事を一変させうる兵器「中国版HIMARS」とは何か

  • 5

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 6

    【映像】華麗なるスライディングを披露するゴリラ

  • 7

    【動画】プーチン「影武者」説を主張する画像と動画

  • 8

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリ…

  • 9

    中国でミャンマー大使が急死 過去1年で中国駐在大使…

  • 10

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホットコーヒーを浴びせる

  • 3

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 4

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世…

  • 5

    冬に向けて「脱ロシア化」準備中──じわじわ効果を上…

  • 6

    中国ロケット長征5号Bの残骸、フィリピン当局が回収 …

  • 7

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ド…

  • 8

    お釣りの渡し方に激怒、女性客が店員にコーヒーを投…

  • 9

    【動画】ノリノリでピザを投げつけるケイティ・ペリ…

  • 10

    【動画】6つの刃でアルカイダ最高指導者の身体を切り…

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【動画】黒人の子供に差別的な扱いをしたとして炎上したセサミプレイスでの動画

  • 3

    【空撮映像】シュモクザメが他のサメに襲い掛かる瞬間

  • 4

    「彼らは任務中の兵士だ」 近衛兵から大声で叱られた…

  • 5

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 6

    【映像】視聴者までハラハラさせる危機感皆無のおば…

  • 7

    【動画】近衛兵の馬の手綱に触れ、大声で注意されて…

  • 8

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復…

  • 9

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 10

    【動画】珍しく待ちぼうけを食わされるプーチン

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月