最新記事

パンデミック

ゲーム機メーカーの苦悩続く サプライチェーン混乱、輸送費が前年の5倍に

2021年12月18日(土)11時45分
ゲーム機コントローラーを製造する中国・東莞の工場の女性従業員

肌寒いある日の朝、中国から米ボストン郊外にあるゲーム機企業T2Mの倉庫に届いた貨物コンテナはパレット(荷役台)に穴が空いていた。写真はT2Mのゲーム機コントローラーを製造する中国・東莞の工場で7日撮影(2021年 ロイター/David Kirton)

肌寒いある日の朝、中国から米ボストン郊外にあるゲーム機企業T2Mの倉庫に届いた貨物コンテナはパレット(荷役台)に穴が空いていた。「フォークリフトの仕業に違いない」──。最高経営責任者(CEO)のフレーザー・タウンリーさんはそうつぶやきながらも、製品が倉庫に届いただけで御の字だと思っている。

この傷は、T2Mのゲーム機が中国・広東省の工場からはるばる1万0710マイルの旅を経てボストン郊外に届くまでについたものだろう。製品はここから、小売り大手ベスト・バイなどに配送されていく。

新型コロナ禍で世界の需要は突然縮小した後、一転して急回復し、世界的なサプライチェーン(供給網)に混乱を引き起こした。特に年末商戦を控えたこの時期、メーカーや小売企業、鉄道、トラック配送業者は商品を店頭に届けるのに四苦八苦している。ロサンゼルス港に滞留するコンテナ船の数は過去最多を記録し、波止場には空のコンテナが積み上がっている。

遠隔地の工場で商品を安く製造する世界的なシステムに頼ってきたT2Mなど多くのメーカーが、この混乱によって打撃を被っている。企業はこうした供給網を構築する上で、手元の在庫を最小限まで切り詰めた。それによって利益は大いに恩恵を受けたが、現在のように供給網が目詰まりを起こすと、悲惨な目に遭う。

T2Mのゲームコントローラーは、ベスト・バイ、ウォルマート、ターゲットなどの大手小売りチェーンやアマゾンで販売されている。製品の中には、アップルの「iPhone(アイフォーン)」に有線接続できるように作られた唯一のフルサイズ機もある。

タウンリーCEOは自社工場を保有せず、多くの消費者向け企業と同様、自身で機器を設計し、製造は中国の工場に任せている。

T2Mの中国拠点でシニア設計エンジニアを務めるブリーズ・フェン氏は、東莞市の工場で製品が製造され、コンテナに収められるまでを見届ける。コンテナはトラックで香港に送られた後、米西海岸行きの貨物船に載せられる。

フェン氏によると、危機が頂点に達したのは6月のこと。ちょうど年末商戦までに米国に配送できるよう詰めの作業を行っていた時だった。コンテナ確保を試みたがかなわず、「なすすべもなかった」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中