最新記事

人間関係

スタンフォード大MBA学生の9割が受講する「人間関係」の授業の中身

2021年10月5日(火)18時19分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

エレーナが抱える過去の経験は、以前所属していた職場で上司に盾ついて解雇を言い渡されたというもの。解雇の背景を紐解けば共感を得られるような内容だが、同僚にこのことを伝えることのリスクが頭をよぎり、口をつぐんでしまったという。

リスク回避は賢い選択かもしれないが、エレーナのように慎重に振る舞いすぎて、関係を停滞させてしまう人が多いのも事実。このジレンマにどう向き合えばいいのだろうか。

著者のブラッドフォードとロビンが提案するのは「15%試してみようルール」だ。
同心円状の三重の輪をイメージしてほしい。中心から外に向かうにつれて「居心地のよさ」の度合いが減っていく。

211005pub_sta02.png

『スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業』より

中央の小さな円は「快適ゾーン」。深く考えることなく言葉を発し、行動しても、まったく問題ないと感じる状態を指す。一方、一番外側の輪は「危険ゾーン」。悪い結果につながる可能性が極めて高いため、口にしたり行動に移したりしない言動が含まれる。そして、2つの間に位置するのが「学びのゾーン」。相手の反応を予測できない状態がここに該当し、人はこのゾーンでの経験を通じて多くの学びを得る。

思い切って「学びのゾーン」に飛び出してみたら、意図せずして「危険ゾーン」に入ってしまうのではと恐れる学生たちに提案するのが、「快適ゾーン」から15%分だけ「学びのゾーン」に足を踏み入れてみるという穏やかなアプローチだ。

このアプローチはうまくいかなくても深刻な事態にはなりにくく、逆にうまくいけば、相手に自分を深く知ってもらえるというメリットがある。そして、うまくいけば、さらに15%外に踏み出す選択肢も浮上してくる。

学びを生む原動力は、快適ゾーンの外に踏み出すことだ。初めてスキーをするときは上級者コースではなく初級者コースを選ぶが、ひとたび滑り方をマスターしたら、挑戦しがいのあるコースに移らなければ上達は望めない(これが15%に当たる)のと同じ。

新しいコースにチャレンジするときには怖かったり、逆にわくわくしたり、あるいはその両方かもしれないが、ある程度の時間が経つと快適ゾーンが広がっていることに気づき、さらに難しいコースに行けそうな気がしてくるものだ(これが次の15%)。

もちろん初級者コースに居続けることも可能だが、上達は望めない。同じようにできることを少しずつ増やしていくプロセスこそが人間関係構築のカギであり、それがあって初めて自己開示を重ねるための土台が整う。

では、エレーナにとっての「15%」とはどんなものだろうか。
前職を解雇されたことまで打ち明ける必要はないが(そこまでやると、危険ゾーンに入りかねない)、前の会社で不快な思いをしたことは伝えられたはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.

ワールド

トランプ政権、元欧州委員ら5人のビザ発給禁止 「検

ワールド

米連邦地裁、H─1Bビザ巡る商工会議所の訴え退ける

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡 ガス漏れか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中