最新記事

韓国社会

土地価格高騰の韓国、トレンドは「借金して投資」 30代の切実な家計事情

2021年9月1日(水)18時38分
ソウルの街を歩く女性たち

韓国で先月、新たな融資規制が発表されると、食品チェーンの仕入れマネジャーをしているジョー・パクさん(34)は、急いで借り入れを増やそうと走り回った。写真は7月、ソウルの街を歩く女性たち(2021年 ロイター/ Heo Ran)

韓国で先月、新たな融資規制が発表されると、食品チェーンの仕入れマネジャーをしているジョー・パクさん(34)は、急いで借り入れを増やそうと走り回った。

融資ブローカーに断られたパクさんが探し求めたのは、ずっとコストが高いクレジットカード融資など幾つかの代替的な金融手段だ。この先食費や貯蓄に回すお金が減るのを知りながら。

パクさんのように、投資のために必死に金策に動く韓国の若者が主導する形で、国内では借金ブームが発生し、韓国銀行(中央銀行)にとって懸念すべき潮流の1つになっている。

「当局が今融資の上限を下げるのは極めて不公平だ。私の信用スコアは完璧で、金利が上がってもより多くの利息を払える。なぜ融資をカットするのか。ここは社会主義国か」と憤るパクさんは、5年前に働き始めてから一度も返済が遅れたことはないと強調し、現実に納得がいかない様子だ。

一方政策当局にとってとりわけ心配なのは、最近導入した一連の規制措置がこうした借り入れの抑制に今のところほとんど効果を及ぼしていない点にある。

銀行が住宅購入、株式投資、生活費などの目的で家計に融資した金額は4-6月に前年同期から168兆6000億ウォン(約15兆8500億円)も増え、1805兆9000億ウォンと韓国の国内総生産(GDP)にほぼ匹敵する規模に達した。これは中銀が2003年にデータ集計を開始して以来、最高の水準だった。

7月に新たな銀行融資規制が打ち出された後でも、同月だけで家計向け融資の増加幅は9兆7000億ウォンと、6月の6兆3000億ウォンを上回った。

パクさんをはじめとするミレニアル世代は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の住宅価格引き下げ政策が何度も失敗したのを目の当たりにしてきた。従って多くの者にとって、両親が属するベビーブーム世代より豊かになるには、借金して投資する以外の選択肢がない。

結局、株式取引のために当座貸し越し口座から1億2000万ウォンを引き出したパクさんだが、世界で最も過熱している部類に入る韓国の不動産市場に手が届かなくなったことへの不満は、絶望へと変わりつつある。

規制強化の波紋

韓国では数週間前に貸出金利が上向き始め、利上げ見込みにもかかわらず、借金増加ペースが鈍る気配は見えなかったとアナリストは話す。

しばらく前から、韓国の若者の間で金融リスクが蓄積されてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 2

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子供を「蹴った」年配女性の動画が大炎上 「信じ難いほど傲慢」

  • 3

    あまりの激しさで上半身があらわになる女性も...スーパーで買い物客7人が「大乱闘」を繰り広げる動画が話題に

  • 4

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 5

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 5

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 9

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中