最新記事

ビットコイン

仮想通貨ブームのパキスタン、後手に回る法規制

2021年7月26日(月)10時31分

暗号資産は、教育界でも注目を集めている。国内有数の大学であるラホール経営科学大学は今年2月、ビットコインをアプリやスマートコントラクトに結びつけるブロックチェーンネットワークのスタックス社から、410万ドルの研究助成金を受けた。

スピード不足

ただ、暗号資産の普及を支持する人々にとって、関連する法律の整備や投資は、十分なスピードとは到底言えない。

金融機関が資金洗浄に絡む懸念から、暗号資産の取引を手掛ける人々に疑いの目が向けられてきたということもある。

アフマドさんはこれまでに2度、連邦捜査局(FIA)に逮捕され、資金洗浄と電子詐欺の容疑で起訴されたが、裁判では無罪となった。

アフマドさんは同国北部、カイバル・パクトゥンクワ州のシャングラに設置した、自前の水力発電で稼働する暗号資産採掘施設をFIAに押収されたこともあるという。FIAは、ロイターのコメント要請に応じなかった。

ユーチューブで100万人以上のフォロワーを持つ元テレビ司会者のワカール・ザカさんは、暗号資産業界の合法化とこの業界への公的投資を何年も政府に働きかけてきた。ザカさんもアフマドさんと同様に、水力発電を利用した暗号資産採掘施設を立ち上げている。

今年初めにカイバル・パクトゥンクワ州政府は、暗号資産関連ベンチャーから利益を得る方法を検討する委員会のメンバーにザカさんとアフマドさんを起用。3月にはザカさんの施設をひな形に、新たな採掘施設の設立を検討していると発表した。

もっとも州政府は、暗号資産に関する新たな政策は連邦政府が扱うべきだとして、6月にこの委員会を解散した。

課題はあるが、パキスタンの暗号資産ブームは止む気配がない。

パキスタンを拠点とするソーシャルメディアグループには、暗号資産の取引や採掘の方法を説明するものが多く、中にはフェイスブックのフォロワー数が数万人に達するグループもある。ユーチューブではウルドゥー語で書かれた暗号資産の動画が、何十万回も再生されている。

ローカルビットコインズ・ドット・コムのようにパキスタン国外に拠点を置くオンライン暗号資産取引所には、何百人というパキスタン人トレーダーが登録しており、何千件もの取引実績を持つトレーダーもいる。

ウェブ分析会社・シミラーウェブによると、バイナンスやBinomoなど暗号資産取引アプリは、国内最大手クラスの銀行のアプリよりもダウンロード数が多い。

アフマドさんは「暗号資産を止めることはできないのだから、パキスタンは規制を設けて世界の他の国と一緒になるのが、早ければ早いほど好ましい」と話した。

(Umar Farooq記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ビットコインはコロナを経て、インフレヘッジ資産として劇的に成長した
・ビットコインを法定通貨に採用した国...仮想通貨が国家経済と財政を救う?
・本気で国の未来をビットコインに賭けたウクライナ...その内情と勝算


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ第3四半期納車が過去最高、米の税控除終了で先

ビジネス

ホンダ、ブラジルの二輪車工場に440億円投資 需要

ビジネス

マクロスコープ:生活賃金の導入、日本企業に広がる 

ワールド

米政権が「麻薬船」攻撃で議会に正当性主張、専門家は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中