最新記事

ビットコイン

仮想通貨ブームのパキスタン、後手に回る法規制

2021年7月26日(月)10時31分
仮想通貨のイメージフォト

パキスタンでは暗号資産は違法ではない。しかし、世界各国・地域のマネーロンダリング(資金洗浄)などの対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は、テロ資金や資金洗浄の監視が甘いとして、同国を「灰色リスト」に入れている。6月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

グラム・アフマドさん(38)は週に1度、暗号資産(仮想通貨)のコンサルティング業務の合間を縫って対話アプリ「ワッツアップ」にログインし、パキスタンでどのように暗号通貨の「採掘」や取引を行うかを数百人のメンバーに指南している。

参加者は副収入を得たい主婦から採掘用装置の購入を望む裕福な投資家まで、多岐にわたる。多くの人は従来の株式市場の仕組みすらほとんど理解していないが、それでも誰もが稼ぎを得ようという熱意にあふれている。

「質問コーナーを設けるとメッセージが殺到するため、何時間もかけて質問に答え、暗号資産の基本を教えている」と語るアフマドさんは、ビットコインの採掘の方が儲かると考え、2014年に仕事を辞めた。

パキスタンでは、暗号資産の取引や採掘がブームになっており、ソーシャルメディアでは関連動画が何千回も再生され、オンライン取引所で数多くの売買が行われている。

パキスタンでは暗号資産は違法ではない。しかし、世界各国・地域のマネーロンダリング(資金洗浄)などの対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は、テロ資金や資金洗浄の監視が甘いとして、パキスタンを「灰色リスト」に入れている。

こうした動きを受けて、パキスタン政府は暗号資産の規制を検討する委員会を立ち上げた。同委員会にはFATFがオブザーバーとして加わっているほか、パキスタン政府の閣僚や情報機関の責任者などが参加している。

オックスフォード・フロンティア・キャピタルのパートナーで、カラチの証券会社の会長でもある委員会メンバーのアリ・ファリド・クワジャ氏は「メンバーの半分が暗号資産が何かを全く理解せず、理解しようともしていなかった」という。

一方で、クワジャ氏は「委員会が立ち上げられたのは良かった。成果を出さざるを得ない政府関係機関が委員会を支援しており、誰も技術革新の邪魔をしようとしないのは見込みがある」と期待も寄せる。

パキスタン中央銀行のバキル総裁は今年4月のCNNテレビで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を検討していると述べ、簿外の取引を規制の枠組みに組み込む可能性に言及。「数カ月以内に何らかの発表が可能になる」と表明した。

総裁はこの発言について、ロイターからのコメント要請に応じなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、半導体産業支援策を発表 190億ドル規模

ワールド

焦点:英金融市場、総選挙の日程決定で不透明感後退 

ワールド

仏大統領、ニューカレドニア視察 治安回復へ警官派遣

ビジネス

中国超長期国債が一転大幅安、深セン証取で売買一時中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結果を発表

  • 2

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 3

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレドニアで非常事態が宣言されたか

  • 4

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 7

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    魔法の薬の「実験体」にされた子供たち...今も解決し…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中