最新記事

クーデター

日本の官民連合、ミャンマーで不動産開発 毎年2億2000万円の土地賃料が国軍配下の国防省へ

2021年3月25日(木)17時55分

JOIN、フジタ、東京建物が同事業のために設立した特別目的会社の監査済みの決算報告書によると、3社は2019年、180万ドルの賃料を支払った。シンガポール当局に届け出たこの報告書には、賃料の支払い先は記載されていない。ロイターは3社に金額の確認を求めたが、いずれもコメントを拒否した。

なお、Yコンプレックスは、フジタと東京建物の発表では当初は2020年の竣工を予定していたが、JOINによると、今年2月のクーデター発生を受け安全確保のため現在は工事を休止している。

日本の投資額は世界第5位

ミャンマーの投資企業管理局によると、同国に対する日本の投資額は世界第5位。過去5年間の総額は14億ドルにのぼる。日本政府はこの地域で中国の影響力が強まることを懸念しており、複数の関係者は、ミャンマーに対する資金支援や学術交流、災害救援の訓練などの防衛交流に取り組んできた意義を説明する。

国軍との経済的な関係が明らかになったことで、日本政府や企業はミャンマーとの関係見直しを迫られる可能性があると、人権団体はみている。ミャンマーでビール事業を展開するキリン・ホールディングスは2月のクーデター後、国軍系の複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングスとの合弁を解消すると発表した。会見したキリンの磯崎功典社長はクーデターに言及し、「キリンの考える人権尊重の考えに反する」と語った。

外交や安全保障が専門の多摩大学大学院の井形彬客員教授は、「JOINやJBICだけでなく、日本という国にとって深刻なレピュテーションリスク(評判による企業にとってのリスク)になり得る」と指摘。「人権侵害をする者とビジネスを続ける国だと思われかねない」と話す。

米商務省は3月上旬、ミャンマー国軍の支配下にある国防省と内務省に制裁を科した。米財務省はミヤ・トゥン・ウー国防相、その前任者などにも制裁を科した。

ジャスティス・フォー・ミャンマーやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は2月17日、国連の人権高等弁務官に対し、この土地開発事業と国軍の関係を調査するよう要請した。国連の広報担当者は嘆願書を受け取ったとしたが、それ以上はコメントしなかった。

JBICを所管する財務省にロイターが質問を電子メールで送ったところ、JBICに問い合わせるよう指示された。JBICは融資について「我が国の外為法に基づく適法性の確認を行うことに加え、他国の経済制裁との関係で特段問題ないことを事前に確認した上で、その意思決定を行っている」と回答。ミャンマーの状況を注視しているとした。

JBICが2018年に発表したニュースリリースによると、融資は三井住友銀行、みずほ銀行との協調で実施。両行ともロイターの問い合わせにコメントを控えた。

Yコンプレックスに対する今後の関与についてJOINの担当者は、コメントを避けた。現在の状況については「悩ましい。難しい」と述べるにとどめた。

フジタと東京建物はそれぞれ電子メールで回答し、状況を注視しながら関係者と協議し、対応を検討するとしている。

(Ju-min Park John Geddie 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由
・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が5000トン級駆逐艦視察、ミサイル試験も

ビジネス

モルガンSが2500人削減、3%に相当 全部門対象

ワールド

米上院、トランプ氏の対イラン戦争権限制限案を否決 

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中