最新記事

株式投資

IPO市場はDX分野など活況 コロナ禍で見送った大型案件の再チャレンジも注目

2021年1月19日(火)10時17分

2021年のIPO(新規株式公開)市場は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)分野の案件などを中心に活況となる見通しだ。写真は4日の東証、大発会の様子。中央は麻生太郎財務相。代表撮影(2021年 ロイター/Miho Takahashi)

2021年のIPO(新規株式公開)市場は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)分野の案件などを中心に活況となる見通しだ。昨年上場を見送った大型案件の「再チャレンジ」も注目されている。資金が潤沢な個人投資家や海外勢の参加が引き続き見込まれている。

今年の件数は前年並み以上か

IPO監査・上場支援などを行うEY新日本監査法人のシニアパートナー善方正義氏は、今年のIPO市場について、今年も前年並みかそれ以上の上場件数が見込めそうだと予想する。

「ここ数年で第4次産業革命の主役となるAI(人工知能)やDXといった、既存事業に変革をもたらすことが期待できるスタートアップへの資金流入が国内外で活発化しており、直近でこれらの資金調達を受けた会社が一定規模に成長し、上場時期を迎えつつある」と善方氏は指摘する。

日本取引所によると、20年のIPOは前年比8社増の102社となり、07年以来13年ぶりの高水準となった。年前半はコロナショックの影響に見舞われIPOの中止・延期、公開価格割れが相次いだが、後半では世界的な株高を背景に急速に持ち直した。内訳はマザーズ市場への上場が63社となっている。

20年は、資金吸収額20億円未満の企業がマザーズ市場の全体の約7割を占め、100億円規模の企業はわずか3件と、IPO規模が小さい企業の上場が目立ったが、今年は大型案件が増える可能性が高いという。昨年上場手続きを延期したキオクシアなどの「再チャレンジ」などが見込まれている。

海外勢の参入継続見通し

個人投資家が主体だった新興株市場の需給構造には近年変化がみられており、海外勢のシェアが増加しているのが特徴だ。

東京証券取引所が7日に公表した2020年のマザーズ市場の投資部門別株式売買状況によると、委託取引(全体の93.1%)の内訳は個人投資家が前年の56.53%から54.89%に低下する一方、海外投資家が38.40%から40.33%となった。

東証マザーズ指数はコロナショック時の3月安値から10月高値まで約2.5倍に上昇。それまでは膠着相場が続いていたが、20年の急騰で「世界最強指数」と化し、時価総額上位銘柄に連動し中小型株もつれ高となったことで注目を集めたとみられている。

IPO銘柄の株主構成では、起業家とストックオプションを持つ役員が筆頭株主となることが従来多かったが、最近は海外の投資ファンドが上位株主に浮上するケースが少なくない。

証券ジャパンの調査情報部部長、大谷正之氏は「今年は金余り相場ということに加え、コロナ禍からの脱却が期待される。半導体・グリーン成長戦略に関する銘柄も買われ、投資の幅は広がりそうだ」とみている。


【話題の記事】
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中