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中国当局、アリババ・テンセントなどIT大手の独禁法違反に空前の締め付け

2020年12月20日(日)10時16分

新たな章

中国の巨大IT企業は世界的にも最大級の規模を誇る。同国当局は、これらの企業が競争を阻害する市場支配力を築き、消費者データを悪用し、消費者の権利を侵害しているとの懸念を理由に監視強化に乗り出した。当局は先月、中国の当局としては初めて、インターネット企業による独占的行動を防ぐための規則案を公表した。

世界的には規制当局は、たとえば欧米やインドの当局などが既に米フェイスブック、米アルファベット傘下のグーグルについて独禁法違反の取り締まりを強めている。

法律事務所アレン&オベリーのジャミン・シャン氏は、SAMRは今のところ、こうした国々の当局ほどは「見出しを飾る」案件に取り組んでいないと指摘。ただ、「最近のすべての展開を踏まえれば、SAMRはインターネット業界への法執行で新たな章を開く用意があるようだ」と述べた。

特別扱いは終わり

SAMRの14日の「VIE(変動持ち分事業体)」が関係する3案件処罰は、「インターネット業界も独禁法上の監視から除外しない」姿勢を明確に打ち出した形だ。VIE絡みの案件に対する処罰は初めてだった。

VIEは、外国に上場する法人が中国の外国投資規制をすり抜けて中国企業を支配できる仕組み。これにも2008年成立の中国の独禁法が及ぶのか、中国の当局に買収計画を届け出る義務が生じるのかどうかは、14日時点までは不明確だった。しかし弁護士らによると、今回のSAMRの動きにより、VIE企業にも届け出が当局に期待されていることが示された。

アリババ、テンセント、配車アプリの滴滴出行、電子商取引の美団、短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)など、中国の大手IT企業のほとんどは、このVIEを利用している。

法律事務所ホーガン・ラベルズの共同経営者エイドリアン・エーマック氏は「純粋に独禁法違反の観点で考えると、『なぜVIEを特別扱いするのか』という疑問もあった。今後は『同じような案件なのに違うアプローチを取る』ことはなくなりそうだ」と語った。

(記者:Julie Zhu、Kane Wu、Cheng Leng、Zhang Yan、Yingzhi Yang、Sophie Yu)

[ロイター]


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