最新記事

アメリカ経済

テスラ、S&Pへの採用期待消えず 次の機会は構成銘柄同士の合併か

2020年9月18日(金)12時44分

米電気自動車(EV)大手のテスラがS&P総合500種株価指数の構成銘柄に採用されなかったことは、投資家の失望を招いた。7月9日、米ロサンゼルスで撮影(2020年 ロイター/Lucy Nicholson)

米電気自動車(EV)大手のテスラがS&P総合500種株価指数<.SPX>の構成銘柄に採用されなかったことは、投資家の失望を招いた。しかし、指数の構成企業同士が合併して空きが出るなどすれば、テスラはいつでも採用される可能性が残っている。

S&P指数委員会の決定方法に詳しい2人の関係筋によると、歴史的に見て構成銘柄が減る最大の原因は500社同士の合併だ。テスラのような企業にとっては、これが指数採用のチャンスになるかもしれない。

テスラの利益の質に疑問を呈する市場参加者もいるが、同社がいずれS&P指数に採用されるとの見方は、なお広く共有されている。

インバネス・カウンセルの首席投資ストラテジスト、ティム・グリスキー氏は「テスラがいつかどこかの時点で、S&P指数に入れないことはあり得ない。実はたった今、ペナルティーボックス(スポーツで反則した選手を一時退出させる場所)に入っていて、関係者が状況を見極めている段階かもしれない」と話す。テスラの株式時価総額は「確かに常軌を逸しているようだ」が、それでも無視できない企業だという。

S&Pの広報は、コメントを控えた。テスラからはコメント要請への回答が得られていない。

S&P指数構成銘柄の決定は、一面では科学、一面ではアート(職人技)だ。収益力、浮動株数、株式時価総額などの正式な基準はあるが、指数委員会には裁量権がある。

S&P500種指数が目指すのは市場平均を上回ることではなく、11のセクターおよび、各セクター内の計156の産業の株価動向をうまく反映することだ。

自動車メーカーであるテスラは一般消費財セクターに該当し、このセクターは現在S&P指数において11.4%の比重を占めている。同セクターには小売業者、住宅建築業者、飲食店なども含まれる。

関係筋によると、指数委員会の目標は、その産業を最も忠実に反映する企業を選ぶことだ。また、そのセクターの比重を情報技術(IT)、医療、金融など他のセクターと照らして適切な水準に維持することで、500種指数が市場全体に沿った値動きを示すようにする。

委員会は、刻々と変わる市場構造に基づいて比重を再調整する。指数構成企業同士の合併も、再調整を行う機会だ。

例えば、テスラ株は今年300%超も高騰し、株式時価総額は自動車メーカーとして世界首位となった。これに伴い自動車セクター全体の規模も変わっている。ただ、S&Pがテスラ株の採用を見送って以降、同株は10%超の下落となった。

テスラが7月、4・四半期連続で黒字を出したと発表した時、多くの投資家はS&P指数への採用を期待し、株価は跳ね上がった。4期連続の黒字は指数採用基準の1つだ。

しかし、18日に行われる四半期ごとの構成銘柄の定期見直しを控え、4日に公表された新規採用銘柄リストにテスラは入っていなかった。

データ・トレック・リサーチの共同創業者ニコラス・コラス氏は委員会の決定について「テスラは極めて割高であり、その巨大な時価総額が示すよりも不安定な土台の上に立っている、との明確な総意に基づいているとしか考えられない」と述べながらも、不採用には「驚いた」と明かした。

テスラの直近の決算は、中核となる自動車事業の損失を、温室効果ガス排出権の販売収入が補う形だった。

関係筋によると、数字上、S&P指数の採用基準を満たす企業は常時25―50社ほど存在する。だが、委員会の月次会議が、採用候補にふさわしいとの意見で一致するのは一握りの企業だけだ。

この関係筋は、テスラのような大物企業を前にすると、次に指数から抜けそうな大企業を探したい誘惑に駆られると話す。委員会は常に合併の発表をチェックしており、合併発表は指数に不定期採用される機会だ、と関係筋は付け加えた。

(John McCrank記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NY市長選でマムダニ氏勝利予測、34歳の民主候補 

ビジネス

利上げの条件そろいつつあるが、米経済下振れに警戒感

ビジネス

仏検察、中国系オンライン通販各社を捜査 性玩具販売

ワールド

ロシア石油大手ルクオイル、西側の制裁で海外事業に支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中