最新記事

コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学

コロナ禍での「資産運用」に役立つ行動経済学(3つのアドバイス)

2020年5月26日(火)18時50分
ジョナサン・ハートリー(エコノミスト、米議会両院合同経済委員会・元上級政策顧問)

個人投資家におすすめなのは「市場にお任せ」の運用

ビジネス専門のケーブルテレビCNBCで視聴者に有望銘柄を教えているジム・クレーマーのような人は、株の売買でさぞかし稼いでいると思われるだろうが、実績は必ずしも振るわない。

クレーマーが選んだ銘柄で運用し、運用益を慈善活動に寄付する投資信託「アクション・アラーツ・ポートフォリオ」の実績は過去10年ほどスタンダード&プアーズ(S&P)500種株価指数の上昇率を下回っている。専門家が選んだ銘柄を買うより、ETF(株価指数連動型上場投資信託)を購入するほうがいい。

銘柄選びはなかなか難しい。アルファ値、つまり市場平均よりも高いリターンを得られるかどうかはゼロサムゲームだ。市場では得をする人がいれば、必ず損をする人がいる。とはいえ、市場にはアノマリーがあり、機関投資家は組織的にそれを利用して高いリターンを稼ぐ。ただ個人投資家が繰り返しその手法を使うのは難しく、ETFなど指数連動型ファンドのほうが無難だろう。

今は市場のアノマリーも織り込んだ「スマートベータ」型運用を行う投資ファンドが多くある。もしもあなたが市場全体の値動きと同レベルの収益を目指す「パッシブ運用」では飽き足らず、リスクはあるが将来的に高いリターンを狙える「アクティブ運用」に興味があるなら、このタイプのファンドがおすすめだ。

月の末日の数日前は債券投資の意外な穴場

コロナ禍で経済の先行きが不透明な今、資産の一部を債券など比較的安全な投資先に移したいなら、月末の少し前に購入するといい。私の研究では、債券価格は構造的に月の末日に上がる傾向がある。これはブルームバーグ・バークレイズ総合型債券指数など、複数の銘柄を集約したインデックスの再調整に伴う現象で、債券ファンドマネジャーはそれに合わせて月末に銘柄の再構成をするため特定の債券を買う。

個人投資家がこの動きを利用して稼ぐには、末日の数日前に債券を買い、(短期の利益が欲しいなら)末日に売ればいい。こうした取引はウォール街で「月末」売買と呼ばれ、債券市場(隔月でインデックスの再調整が行われる)ではよくあるアノマリーだ。この現象は名目債、物価連動債を問わず、米国債でも日本国債でも見られる。

<2020年6月2日号「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集より>

※この記事は「消費者が思うより物価は高い(コロナ不況から家計を守る経済学)」に続きます。

20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター

ビジネス

シンガポールのテマセク、事業3分割を検討=ブルーム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中