最新記事

医療

米J&J、新型コロナウイルスのワクチン臨床試験9月開始 実用化は21年初頭に

2020年3月31日(火)15時12分

米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンは30日、実験段階にある新型コロナウイルス用ワクチンの臨床試験を9月までに開始し、2021年初めには緊急使用許可を得られる可能性があると発表した。ニューヨーク証券取引所で昨年9月撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は30日、新型コロナウイルスワクチンの有力候補を選定したとした上で、9月に臨床試験を開始すると発表した。当局の緊急使用許可を受けたうえで2021年初頭の実用化を目指す。

また、開発と並行してワクチンの生産能力を10億本以上まで引き上げるため、厚生省の生物医学先端研究開発局(BARDA)と共同で10億ドル出資すると表明した。J&Jの株価は30日の取引を8%高で終了した。

BARDAは、米バイオ医薬大手モデルナともワクチン大量供給に向け準備を進めることで合意。このほかに少なくとも2社と大量生産を巡る連携について協議していると明らかにした。モデルナは今月、ワクチン候補のごく早期の臨床試験を開始している。

米政府は製薬各社に対し、治験でワクチン候補の有効性が確認される以前に大量生産できる体制を整えるよう促してきた。

BARDAは、J&Jの大量生産への準備に約4億2000万ドル出資すると公表。モデルナにも同様の支援を行うが、額は明らかにしなかった。

モデルナの株価は1.4%高で引けた。

BARDAのディレクターを務めるリック・ブライト氏はロイターに対し、5ー6株のワクチンの開発を支援し、うち2ー3株の有効性が確認できると良いと話した。

専門家はこれまで、安全で有効なワクチンが当局に承認されるまでには1年から1年半の時間を要する可能性があると予想してきた。

ブライト氏は「政府と製薬業界は前例のない形で協業している」と指摘。「可能な限り迅速に取り組み、米国や世界が必要な分だけ早期に生産できるようにする」のが狙いだとした。

モデルナについては、同社が規模を拡大して治験を集中的に行えるよう、BARDAが生産を引き継ぐ考えだとした。米食品医薬品局(FDA)の基準を満たす生産や商品包装などの工程の確立を急ぎたいと語った。

J&Jの最高科学責任者、ポール・ストフェルズ氏はロイターに対し、ワクチン候補が有効だと示される前から生産能力を引き上げる必要があると強調、2021年初頭の実用化目標に「間に合わせるための唯一の選択肢だからだ」と述べた。ワクチンの有効性を証明するデータを年内にそろえるのも目標だとした。

同氏は、同社のオランダ工場は最大3億本のワクチン生産が可能だが、「世界にとって十分な量では全くない」とした。そのうえで、欧州やアジアの他の生産拠点で、開発中のワクチンの生産が可能な場所がないかを探っていると述べた。

ストフェルズ氏は、新たな新型コロナワクチンは、既に広く使われているエボラ熱ワクチンと同じ技術がベースとなると説明し、安全性が証明されると見込んでいると語った。

*内容を追加して再送します。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・トランプ「新型コロナウイルスとの戦い、非常に厳しい2週間になる」
・BCGワクチンの効果を検証する動きが広がる 新型コロナウイルス拡大防止に
・韓国発の超大作『キングダム』、台湾・香港版タイトルが韓国で炎上 新型コロナウイルスもあって問題化


cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アサヒGHD、決算発表を延期 サイバー攻撃によるシ

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上

ビジネス

日経平均は大幅続落、米中対立警戒で一時1500円超

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 9
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中