最新記事

貿易戦争

年内に続々「発動期限」到来 トランプの関税措置

2019年10月17日(木)08時29分

米中両国は先週、貿易協議で部分的に合意した。結果として大半の分野は今後どうなるか分からないままだが、1つはっきりしたのは、米政府が予定していた2500億ドル相当の中国製品に対する関税率引き上げが見送られたことだ。写真はトランプ米大統領。ホワイトハウスで撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

米中両国は先週、貿易協議で部分的に合意した。結果として大半の分野は今後どうなるか分からないままだが、1つはっきりしたのは、15日に米政府が予定していた2500億ドル相当の中国製品に対する関税率引き上げが見送られたことだ。

ただ米国がこれまでに打ち出した新たな関税措置の発動期限が年末までに続々と到来するため、米国はそれぞれ実行するか、延期するか、あるいは再交渉するかの判断を迫られている。既に米国の通商政策に痛めつけられている世界経済にとって、米政府の今後の対応次第ではさらなる悪影響を被る恐れも出てくる。

トランプ政権は過去3年間で、モノの取引だけに基づく貿易相手上位10カ国・地域全てに対して、さまざまな懲罰的関税を導入したり、長らく維持してきた協定の破棄、通商関係の見直しなどを行ってきた。

一部の専門家によると、こうした全面的な貿易戦争を開始したため、米通商代表部(USTR)は米国にとって最も深刻な問題、つまり中国の不公正な貿易慣行を抑え込むという仕事に集中できなくなっている。

かつてトランプ大統領の経済顧問を務め、現在は法律事務所エイキン・ガンプのパートナー、クリート・ウィレムズ氏は、米国は長年にわたって国際貿易に関する重大な問題に直面しており、何らかの形で打開する必要があるのは確かだが、全部同時に片づける必要はなかったと指摘。そんなことをしなければ、もっと中国への対応に力を注げただろうとの見方を示した。

今後の主な関税措置の発動期限や、貿易協定の議会審議日程は以下の通り。

10月18日 EU向け関税

早ければ18日に、米政府はプロボローネチーズやスコッチウイスキーなどのEU製品に25%の関税を課す可能性がある。航空機補助を巡り、世界貿易機関(WTO)が米国に約75億ドル相当の報復関税を導入する権利を認めたためだ。

この措置に基づくと、エアバスが欧州で組み立てた航空機にも10%の関税が適用される。業界関係者は、顧客と合意していた契約を取り消されないように同社がコストの少なくとも一部の引き受けを迫られそうだ、と話している。

フランスのルメール経済・財務相は今月、「もし米政府がフランスやEUが差し伸べた手を拒絶するなら、われわれは制裁という形で動く準備をしている」と語り、EUは対抗措置を講じる見込みだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予

ワールド

中国、EU産ブランデーに最大34.9%の関税 5日

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中