最新記事

映画

韓国・文在寅の賃上げ政策が招いたこと──映画館からスタッフが消えた

2019年10月15日(火)18時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

韓国の最大の映画チェーンCGVは海外進出し、中国、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、アメリカへ展開。写真はインドネシアのジャカルタ店。Willy Kurniawan - REUTERS

<9年ぶりの革新政権として「所得主導成長」といった経済政策を掲げて改革を打ち出してきた文在寅。だが、その思惑とは裏腹に、改革は様々な分野にネガティブな影を落とし始めている>

日本では10月1日から消費税の増税が行われた。2014年に5%から8%になって以来5年ぶりの引き上げだ。今回、食品についてはテイクアウトなら8%、店内飲食なら10%という軽減税率システムが導入されたが、その線引きについての判断がややこしく、さらにキャッシュレス購入時のキャッシュバック制度など、しばらくは混乱を招きそうだ。

この消費税、もちろん映画館内での飲食にも適用されているのだが、意外にも軽減税率も関係している。映画館のロビーでの飲食の場合は10%となり、劇場内に持ち込む場合はテイクアウト扱いで8%になるという。おちおちロビーでポップコーンを摘まむ事もできなくなってしまった。

消費税のほかにも上乗せされる韓国の映画

韓国の映画館はどうなっているだろうか? 韓国は付加価値税が税金として10%掛けられているが内税になっている。映画館でも同様だ。しかし、入場料金が書かれた観覧チケットをよく見てみると「付加価値税、利用料含む(부기세, 이용료 포함)」の前に日本では見慣れない「映画発展基金3%(영화발전기금 3%)」という文字が書いてある。これは一体何なのだろうか?

korea_cinema_receipt.jpg

韓国の映画の観覧チケット。赤枠のところが映画発展基金と付加価値税についての記述/写真提供:小黒優子氏

映画発展基金は2007年に、韓国の政府機関である映画振興委員会によって設立され、映画制作/流通/映画祭支援/海外進出など、映画の発展のための支援を行っている。制作支援策として一例をあげると『プリースト 悪魔を葬る者』『暗殺』など。また、シナリオ見本市を通じ『観相師-かんそうし-』など名作の制作支援も行っている。

また、韓国はエンターテインメントコンテンツの海外展開に積極的だが、海外映画祭での映画見本市へブース出展や、ハリウッド映画の韓国ロケ誘致活動費用にもこの映画発展基金の資金は運用されている。他にも変わったところだと、映画振興委員会所有の南揚州総合撮影スタジオや韓国映画アカデミー(通称KAFA)の運営、子供やお年寄りに向けての映像教育などにも役立てられている。

観客からチケット代に含まれた映画発展基金資金の使い道は、映画振興委員会のホームページで誰でも確認することができる。このように自分が払ったチケット代のうち3%が、さらに良い映画を生み出す資金になっているのなら喜んで支払いたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ

ワールド

トルコのロシア産ウラル原油輸入、3月は過去最高=L

ワールド

中国石炭価格は底入れ、今年は昨年高値更新へ=業界団

ワールド

カナダLNGエナジー、ベネズエラで炭化水素開発契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中