最新記事

消費増税からマネーを守る 経済超入門

低成長、消費増税、少子化......それでも日本人は楽観していい

JAPAN IS THE FUTURE

2019年10月2日(水)11時45分
ピーター・タスカ(経済評論家)

しかし、日本の賃金は上昇に向かう可能性が高い。構造的な人手不足に悩まされている日本では、働き手の交渉力が強まると予想されるからだ。

そうなれば、会社は高価な労働力を有効に活用しなくてはならない。その結果、労働環境が改善し、柔軟でオープンな企業文化が形成され、女性や高齢者や外国人の受け入れも進むだろう。

超低金利により、日本の預金者が受け取る利息はほぼ消滅した。しかし、株式の配当が増えれば状況は好転する。日本企業の配当は昔に比べればかなり増えたが、欧米に比べればまだ少ない。株式投資からもっと安定的な配当収入がもたらされるようにすべきだ。

そうした変化が実現すれば、株式相場が何十年も上昇しなくても、個人投資家は配当収入を当てにできる。その場合、配当を老後の生活資金に回せるし、増税のような試練にも対処しやすい。「銀行口座族」と「配当族」の差は天と地ほど大きく広がるだろう。

悪いニュースばかり? ニュースは悪いものと覚悟しておいたほうがいい。大事なのは、賢く投資し続けること。そして、高齢になっても元気であり続けることだ。

日本では、人々の生活水準、健康状態、資産、暮らしの快適さが向上し続けてきた。変化への適応能力に長けた日本では、今後もそうした進歩が続くだろう。世界は日本から目を離さないほうがいい。未来はここにある。

(筆者は近著に『On Kurosawa: A Tribute to the Master Director』〔写々者・刊〕がある)

<本誌2019年10月8日号「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集より>

※「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集では、経済の各分野の専門家たちに税金や貿易、年金、貯蓄、住宅、投資、キャッシュレスなど経済の仕組みを分かりやすく解説してもらい、「損をしないためにはどうすればいいか」をアドバイスしてもらいました。

【参考記事】消費増税が痛い今こそ見直したい、不合理で結局は損な消費行動

20191008issue_cover200.jpg
※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。


ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中