最新記事

日本経済

日本政府の韓国ホワイト国除外、国内企業へ大きなインパクトもたらす

2019年7月25日(木)09時24分

韓国を包括輸出対象国(ホワイト国)から除外する日本政府の手続きが完了した場合、年間6200億円を超す半導体製造装置の輸出に大きな影響が出そうだ。ASEMサミットで昨年10月撮影(2019年 ロイター/Francois Lenoir)

韓国を包括輸出対象国(ホワイト国)から除外する日本政府の手続きが完了した場合、年間6200億円を超す半導体製造装置の輸出に大きな影響が出そうだ。輸出側の日本企業と輸入側の韓国企業双方の事業に短期的打撃が発生する事は避けられないが、この問題に詳しい自民党議員からは短期的な損失は予想しており、中長期的なメリットを勘案しながら、最終的な決断を行うとの方針が示されている。

財務省が発表している貿易統計によると、2018年の対韓国向け輸出総額は5兆7925億円で輸出全体の約7%。その中で輸出額が多いのは半導体等製造装置の6297億円、鉄鋼の4551億円、半導体等電子部品の2565億円。

半導体等製造装置の対韓輸出は、全世界向け輸出の2割強を占める。この分野での日本企業の世界シェアは高く、輸入している韓国企業にとっても「メンテナンスなどのアフターサービスが充実し、日本企業らしいきめ細かなサービスが魅力となっている」(同業界関係者)という。

このような状況の中で、包括的な輸出許可が出なくなり、個別審査による輸出許可を待つシステムへのシフトは、商品の受注から実際の出荷までの期間が大幅に長期化し、短期的に韓国企業のニーズに応えることが難しくなることが予想される。

複数の関係者によると、日本メーカー側は売上高、営業利益を短期的に押し下げる可能性があり、韓国企業にとっては稼働率の低下による売上高、営業利益などの下押し要因になる。

業界筋によると、日本から大規模に半導体製造装置を輸入している企業として、サムスン電子、SKハイニックスなどが知られているという。

こうした展開が予想される中で、甘利明・自民党選挙対策委員長とともに、「国家経済会議」の創設を提言しているグループに属する同党の中山展宏・衆議院議員は、ホワイト国除外措置の検討について「日本の国益が損なわれる安全保障上の問題を重視しているため」と説明する。

そのうえで「短期的に韓国、日本企業に打撃があることは承知している」との見解を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中