最新記事

日韓関係

日本の韓国向け輸出規制が発動 対象となる材料と重要性、日本企業への被害は?

2019年7月4日(木)10時00分

日本政府は1日、スマートフォンなどの製造に必要な材料の韓国向け輸出規制を強化すると発表した。写真は2012年8月、都内で撮影(2019年 ロイター/Yuriko Nakao)

日本政府は1日、スマートフォンなどの製造に必要な材料の韓国向け輸出規制を強化すると発表した。

対象となる材料やその重要性についてまとめた。

◎輸出規制が強化される材料と、その用途

対象はフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目。

フッ化ポリイミドはスマホのディスプレーに使われる。レジストは半導体ウエハーに回路パターンを転写するために塗布される薄い膜。フッ化水素は半導体製造工程においてエッチングガスとして使われる。

◎なぜ問題なのか

日本メディアによると、日本はフッ化ポリイミド生産で世界の約90%、エッチングガスで約70%を占めている。政府の報告によると、レジストの生産シェアは約90%。このため韓国の半導体メーカーは代替的な供給元を探すのが難しい。

韓国の大手半導体メモリメーカー筋は、韓国企業は在庫の積み増しを迫られると指摘。同社はレジストとエッチングガスの7割以上を日本に頼っていると述べた。

◎影響を受けそうな企業

サムスン電子、SKハイニックス、LGディスプレーはいずれも影響を受けそうだ。

韓国は今年1─5月に日本からレジスト1億0352万ドル、フッ化水素2844万ドル、フッ化ポリイミド1214万ドル相当を輸入した。

日本経済新聞によると、レジストを供給している日本企業はJSR、東京応化工業、信越化学工業、エッチングガス製造企業は昭和電工など。

関東電化工業も影響を受けそうだ。

◎輸出規制の仕組み

日本は3品目の対韓輸出について優遇扱いを中止し、輸出業者にその都度の許可申請を義務付ける。政府高官によると、審査には約90日間を要する。

日本は、韓国を安全保障上の友好国である「ホワイト国」のリストからもはずす計画。日本の輸出業者は軍事転用の恐れがある製品の輸出について許可を求める必要が生じる。

日本はドイツ、韓国、英国、米国などの27カ国をホワイト国に指定している。

◎紛争の背景

日本政府は、元徴用工問題で韓国政府が行動を起こさないとして不満を抱いている。韓国側は、日韓両国企業が出資して韓国人元徴用工への損害賠償金の財源をつくる案を提示したが、日本はこれを拒否した。

日韓両国の間には、1910年から45年に日本が朝鮮半島を植民地支配した苦い歴史がある。

◎WTO

韓国は日本の措置について、世界貿易機関(WTO)のルールに違反すると非難。WTOへの提訴など必要な対抗策を講じると表明している。

日本はWTO違反に当たらないとの立場だ。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 健康長寿の筋トレ入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月2日号(8月26日発売)は「健康長寿の筋トレ入門」特集。なかやまきんに君直伝レッスン/1日5分のエキセントリック運動

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送仏政権崩壊の可能性、再び総選挙との声 IMF介

ビジネス

エヌビディア株、決算発表後に6%変動の見込み=オプ

ビジネス

ドイツとカナダ、重要鉱物で協力強化

ワールド

ドイツ、パレスチナ国家承認構想に参加せず=メルツ首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 9
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 9
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中