最新記事

ヘルス

その筋トレ用サプリは大丈夫?

2017年12月19日(火)17時15分
ケイト・シェリダン

「研究用」の筋肉増強剤がネットで流通 Lucy Nicholson-REUTERS

<日本からも個人輸入できるボディービル用薬物「SARM」の得体の知れない魅力と危険>

おなかを引っ込めるだけでなく、マッチョなボディーを手に入れたい――。そんな男性たちにとって、気になる調査結果が発表された。アメリカで未承認の薬物が、筋トレ用サプリとしてインターネットで幅広く流通していることが分かったのだ。

しかも、この選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM、「サーム」として販売している日本語サイトもある)という成分は、「ボディービルダーにとって理想のサプリ」「ステロイドよりも効果的」などとうたわれているが、実際に届いた商品の約半分にはSARMが全く含まれていなかった。

これは米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の研究チームが、11月末に米国医療情報学会誌に発表した論文で明らかにしたもの。通販サイトで購入した44種類のSARMサプリを調べたところ、実際にSARMを含んでいたのは52%で、39%には別の未承認成分が含まれていた。

さらに44製品のうち9%には有効成分が全く含まれておらず、59%はラベルに表示された内容と実際の分量が一致しなかった。つまりインターネットでは、米食品医薬品局(FDA)で認められていないSARMサプリが流通しているが、その中味もラベルもかなりテキトーだ。

SARMとは、筋肉増強剤として知られるアナボリックステロイド(いわゆる筋肉増強剤)と同じ効果を持つとされる薬物群のこと。さまざまな種類があり、骨と筋肉の増強に効くSARMもあれば、前立腺肥大症の治療薬として期待されるSARMもある。

ネット通販の無法地帯

ステロイド剤と同じように、SARMは世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに含まれており、スポーツ選手は使用することができない。その一方で、アメリカでは最大で400万人の若者が、SARMを少なくとも1度は使用したことがあると、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のシャレンダー・バシーン男性健康研究部長は指摘する。

「80年代までは、運動能力向上薬を使うのはエリート運動選手に限られていた。ところが90年代に入ると、それが一般の若い男性にも広がった」と、バシーンは語る。「その目的は運動能力を向上させることではなく、贅肉のない筋骨隆々とした体を手に入れることだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏

ワールド

プーチン氏、欧州に警告「戦争なら交渉相手も残らず」

ビジネス

ユーロ圏インフレは目標付近で推移、米関税で物価上昇

ワールド

ウクライナのNATO加盟、現時点で合意なし=ルッテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中