最新記事

ブランド

「後発だった」ナイキがスニーカー市場でトップになった理由

2017年11月3日(金)16時30分
東洋経済新報社出版局 ※東洋経済オンラインより転載

靴に人生を懸けた男が語る、ナイキの強さの源泉とは(写真:ABCマート)


<話題の一冊、ナイキ創業者の自伝『SHOE DOG(シュードッグ)』がついに発売された。創業から上場までの葛藤や失敗を描いた本書は、成功した経営者が書いたビジネス書でありながら自慢めいたところがなく、コンプレックスにあふれた人間くさい内容になっている。靴専門店チェーン大手のエービーシー・マート社長は、本書をどのように読んだのか。最近の靴市場におけるナイキの存在感や、ナイキの強さの秘密、そして自身のシューズへの熱い思いについて、語っていただいた。>

新しいことはナイキから始まる

――現在のスニーカー市場でのナイキの存在感を教えていただけますか。

ナイキとアディダスが2強で、現在、ナイキがトップです。それぞれのメーカーごとに個性がありますが、ナイキの個性は「革新性を重んじる」というところでしょうか。ナイキは機能だけでなく、「味付け」が特にすばらしい。

たとえば、シューズのサイズは通常、25.5センチとか、26.0センチとか、0.5センチ単位で展開されます。ところが以前発売されたナイキのプレストというシューズは、アッパーに伸縮性があって、XS、S、M......といった洋服のようなサイズで展開され、驚いた覚えがあります。スウェットのような素材で、「スニーカーを着る」といった感じでした。

また、近年ではシューズのアッパーの大部分を1本の糸で編み上げたフライニットというニット調の新素材を開発しました。今では、売れているスニーカーはこのようなニット調のアッパーが主流になっている。こうした独自の「味付け」を世に放ち、先駆者になっているのです。

製品だけでなく、ビジネスの仕組みにおいてもそうです。『シュードッグ』の中にもフューチャーズ・プログラムの話が出てきます。私たちのビジネスには、納品の約1年前に開催する展示会などで小売店がシューズを発注するフューチャーオーダー制という仕組みがあります。これを最初に取り入れたのはナイキです。「新しいことはナイキから始まる」。そんな感がありますね。

――そうした革新性の背景は、どこにあるのでしょうか。

その原動力になっているのが、『シュードッグ』でも描かれていたように、アスリートたちへのホスピタリティ精神の強さ。アスリートにシューズを提供して意見を聞いて、改善して、また提供して......。そうして、アスリートの声に応える確かな技術を確立して、スポーツの世界での地位を高めていったわけです。

1970~80年代、ファッションとしてのスニーカーはアディダスが圧倒的な人気でした。大学時代に私がビームスでバイトをしていた頃、後に爆発的な人気となる「ジョーダン1」が入ってきたのですが、さほど売行きはよくなかったと記憶しています。

でも、ナイキから商品を提供されたアスリートたちが、ナイキを履いて活躍し始め、それを見た一般の人が「あれはなんだ」と注目して街で履き始める。こうして、スポーツ界だけでなく、ファッション界をもナイキが牽引する形になったのです。特にマイケル・ジョーダンと、彼の名を冠したエア・シリーズはその代表ですね。

toyokeizai171103-banner.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に華やか

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 6
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 7
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中