最新記事
ニュースデータ

「親より良い生活はできない」日本に求められる新しい人生観

30代男性の6割以上が「父親の若い頃より自分の地位は低い」と感じている

2015年11月10日(火)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

先進国では概して将来への展望は暗いが、その中でも日本は突出している Ocus Focus-BIGSTOCK

 人間は加齢とともに成長してやがて老いるが、それは社会にもあてはまる。このアナロジー(類推)で言えば、日本はすでに老いを迎えた社会だ。経済発展(成長)の山はとうに越え、これから先は縮小するだけ。このような見通しは、人々の将来の展望にも反映され、「これから先、生活は悪くなる」と考える人が増えてきている。

 子どもの将来を悲観する人も多い。アメリカの調査機関ピュー研究所が2014年に実施した国際意識調査では、「子どもの将来の暮らし向きは、親世代よりも良くなるか、それとも悪くなるか」と尋ねている。これに対する日本人の回答を見ると、79%が「悪くなる」と答え、「良くなる」は14%しかいない(残りは「同じようなもの」、「分からない」)。

 まさに「希望が持てない社会」だ。しかしこうした傾向は万国共通ではなく、上記の設問への回答は社会によって大きく異なる。下の<図1>は、横軸に「良くなる」、縦軸に「悪くなる」の回答比率をとった座標上に、調査対象の44カ国を配置したものだ。

maita151110-chart01.jpg

 きれいなクラスターに分かれている。希望が持てる社会と、そうでない社会。日本や欧米諸国は後者だ。発展を遂げた後、将来の見通しは悪くなる一方という、先進国の悲哀が感じられる。

 対極の右下には、今後も発展が望める途上国が多く位置している。昨今の経済発展が著しい中国やインドネシアも、この中に含まれている。上図の配置には,それぞれの社会の位置付けが如実に表れている。日本も高度経済成長期の頃は右下にあったのだろうが、現在では左上にシフトしてしまっている。

 各国の位置は、高齢化のレベルとも関連が深い。日本では少子高齢化が急速に進行し、将来の現役層の負担が大きくなることが見込まれている。子どもの将来を悲観する人が多いのも無理からぬことだ。イタリアやギリシャも同様の事情を抱えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中