最新記事

テクノロジー

グーグルが軍事施設を丸裸に

グーグルマップのコンテスト参加者が描いてしまった禁断の地図

2014年8月22日(金)12時46分
テイラー・ウォーフォード

お見通し 秘密施設の場所もグーグルの手にかかれば…… Mukesh Gupta-Reuters

 インド政府はグーグルに腹を立てている。インドのPTI通信によれば、グーグル主催の地図コンテストで秘密の軍事施設の位置が暴露され、インドの中央捜査局が調査に乗り出した。

 グーグルの企画趣旨によれば、「マッパソン2013」と銘打ったこのコンテストの目的は「グーグルマップでインドの正確な地図情報を作成する」こと。一見、問題はなさそうだ。

 ただし、コンテスト優勝者のビシャル・サイニが地図を作成した都市パタンコットは、ジャム・カシミール州に近い場所にある。同じ場所をアザド・カシミール(自由カシミール)州と呼ぶ隣国パキスタンと47年以降、3度も戦争をしてきた国境の紛争地帯だ。そこにある軍事施設の位置がグーグルマップで丸裸になる事態をインドが喜ぶわけはない。

 米ポピュラー・サイエンス誌によれば、サイニは自作の地図をグーグルに提出した際、かなり大きな地域に「軍事領域」という目印まで付けていた。

 インドでは、勝手に地図を作って情報提供することは許されない。国の地図の作成と更新を担い、軍事施設が民間向けの地図に表示されないよう監督する政府機関、インド測量局(SOI)も目を光らせている。

 グーグルはインドでコンテストを開催するに当たり、SOIに事前の許可申請をしなかった。グーグル・インドの担当者はビジネス・スタンダード紙に次のように語った。「関連当局とは連絡を取り合っているし、法令遵守や安全保障問題にも気を配っている。この問題について、これ以上語ることはない」

 領有権が争われている地域でグーグルマップが問題を起こしたのはこれが初めてではない。10年には、グーグルは特定の地域の情報が異なる32通りの地図を作成していることが暴露された。つまり、インド人ユーザー向けのカシミールの地図と、パキスタン人向けの地図は違うというわけだ。

 コンテストで集めた「正確な」地図情報は、グーグルだけのものになるのだろう。

[2014年8月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官

ワールド

米台貿易協議に進展、台湾側がAPECでの当局者会談

ビジネス

中国製造業PMI、10月は49.0に低下 7カ月連

ビジネス

ニコン、通期業績予想を下方修正 精機事業が下振れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中