最新記事

改革

中国の水増し経済指標がついに是正されるかも

GDPなどのデータ捏造問題に政府がようやく重い腰を上げたが

2014年1月23日(木)14時45分
ジェームズ・パーカー

真実 李克強首相自身、政府発表のGDP統計は「人為的」だと漏らしたことがある Bogdan Cristel-Reuters

 アナリストであれ市場関係者であれ、中国の経済や金融制度について理解しようとする者は、統計の信憑性という問題に必ず直面する。しかし中国国家統計局の馬建堂(マー・チエンタン)局長が先週、今年こそこの問題の一部解消に取り組むと発表した。

 昔から中国政府発表の統計といえば、肝心のGDPも含めて、いくら計算してもつじつまが合わないということが、専門家たちにとって悩みの種だった。しかもそういう指摘をしてきたのは、外国人エコノミストや非主流の中国人学者だけではない。

 昨年の春に首相に就任した李克強(リー・コーチアン)は、かつて政府発表のGDP統計のことを「人為的」だから「参考」にとどめるべきだ、と語ったという逸話で有名だ。

 その発言は内部告発サイト「ウィキリークス」を通じて暴露された。07年に当時の駐中米国大使との会話で漏らしたというのだが、その後伝えられたところによると、具体的には李はむしろ、経済統計の「副指標項目」に注目するという。四半期ごとや年間のGDP値を見る前に、鉄道貨物量や電力消費など基の統計に目を通すのだ。

 そんな人物が首相になって1年近く過ぎた今、中国政府がいよいよ経済指標の信頼性回復に取り組むとしても、決して意外な展開ではない。

 特に大きな問題の1つは、地方政府から報告されるGDPのすべてを合算すると、全国値として中央政府が発表する数値を大幅に上回ってしまうということだ。11年にはその差がトルコ経済の規模にまで達したというので話題になった。先週の国家統計局の発表によると、馬局長はまさにこの問題の是正に取り組もうとしている。

昇進目的のデータ改ざん

 本当にこの問題が改善したら、国家統計局にとって大きな前進となるだろう。だがその前には大きな困難が立ちはだかる。つまるところ、最後は地方が収集するデータに頼らざるを得ないからだ。

 たとえ中央政府機関の調査チームがデータの集計を一手に引き受けるとしても、その根拠となる数字については、結局は地方レベルで提出される結果に依存しなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中