最新記事

生命倫理

遺伝子の私物化に米最高裁が鉄槌判決

ヒト遺伝子を特許で囲い込もうとする製薬会社の試みに「待った」

2013年10月4日(金)13時45分
ジョシュ・ジーザ

命を守れ ミリアッド社に対する最高裁の判決を待つ報道陣 Jonathan Ernst-Reuters

 癌研究や遺伝子検査にとって大きな前進だ。米連邦最高裁は先週、自然に発生するヒト遺伝子を「発見」したからといって特許の対象にはならないという判決を下した。これからは、誰かが先に見つけた遺伝子でも自由に研究や製品開発が行えるようになる。

 この裁判は、ミリアッド・ジェネティクス社が保有するBRCA1、BRCA2という2つの家族性乳癌・卵巣癌の原因遺伝子の特許について争われたもの。「ミリアッドは何もつくり出してはいない」と、判決文は特許の有効性を否定した。

 複数の研究によれば、ヒト遺伝子の20〜40%はどこかの企業が特許を所有。他の研究者たちは、特許侵害で訴えられることを恐れて研究ができなくなっていた。「これでどんな遺伝子も制限なく研究できる」と、ニュージャージー・メディカルスクールのジェフリー・ローゼンフェルド助教は言う。とりわけミリアッドは、ライバルの研究に対し警告状を送るなどの強硬姿勢で知られていた。

 BRCA1は、女優のアンジェリーナ・ジョリーに乳房切除・再建手術を決断させた遺伝子。ジョリーと同じ検査を受けたいと希望していた女性たちにとっても判決は朗報だ。

 この検査はこれまでミリアッドの独占で、3000ドル以上の費用が掛かった。今後は他の企業も参入するので安くなるだろう。複数の検査機関を受診してセカンドオピニオンを聞くこともできる。企業の儲け主義に対する良識の勝利だ。

[2013年6月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

キューリグ・ドクター・ペッパー、JDEピーツ買収で

ビジネス

トランプ米大統領、クックFRB理事を解任 書簡で通

ワールド

空売り情報開示規制、SECに見直し命じる 米連邦高

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、週明けの米株安の流れ引き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中