最新記事

新興国

スタバ「中国の次はインド進出」の誤算

インドのムンバイに1号店をオープンしたスターバックスだが、中国と同じように成功できるとは限らない

2012年10月22日(月)17時24分
ジェーソン・オーバードーフ

新たな試練 インドの若者にとっての憧れのブランドに成長できるか Andrew Winning-Reuters

 米コーヒーチェーン大手スターバックスのインド第1号店が先ごろ、南ムンバイの高級地区にオープンした。同社はインドのタタ財閥傘下の飲料会社と提携してタタ・スターバックス社を設立、来年末までに50店舗を展開しようとしている。
 
 しかし実のところ、インド市場はスターバックスが期待するほど「おいしく」ないかもしれない。インドのカフェ市場は年30%ものペースで成長を続けているが、現在の市場規模は年2億4000万ドル程度。スターバックスの今年第3四半期の収益が33億ドルであるのを考えれば、取るに足らないように思える。

 それに、同じ新興国でも99年に同社が進出して成功を収めている中国とは事情が違う。

 香港の証券会社CLSAのリポートによれば、スターバックスはお茶を好む中国市場に巧みに食い込み、欧米志向を強める中国人消費者にとっての憧れのブランドに成長した。スターバックスにとって中国は今や、アメリカに次ぐ第二の市場だ。

地元ブランドびいきの若者たち

 しかしインド人は、中国人よりもコスト意識が高い。その上インドの若者たちは、世界的ブランドよりも地元ブランドをひいきにする傾向がある(デリーやムンバイに住むエリートの若者たちは、マクドナルドに行くのと同じくらいインド風クレープやケバブの屋台にも足を運ぶ)。

 カフェ産業においては、2つの地元コーヒーチェーン「バリスタ」と「カフェ・コーヒー・デイ」が人気だ。両社は安上がりなデートの場を提供することで、若者たちを紅茶派からコーヒー好きに変えることに成功した。

 インドのコーヒービジネスで稼ぐためには、市場に深く広く入り込む必要があると、カフェ・コーヒー・デイの創業者V・G・シッダールタはビジネストゥデー誌に述べている。「わが社の目標は、2014年末までにインドで2000店、東欧を中心に国外で200店を構えることだ」

 シッダールタはすでにカフェだけでなくコーヒー輸出業や資産管理、不動産開発などを手広く営んでおり、彼の会社の企業価値は今や10億ドルを上回っている。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中