最新記事

通信

携帯ネットでインド版ビッグバンが始まった

携帯通信の高速化と端末価格の低下で、農村からまとめてネット革命期へ

2011年2月23日(水)18時34分
ジェイソン・オーバードーフ

字が読めなくても 識字率が低くても利用できる音声変換などの技術が盛んに開発されている Ajay Verma-Reuters

 世界のITアウトソーシングのメッカとして、インドのテクノロジー産業は成長著しい。だが意外にも、インターネットアクセスの普及率を上げる競争では中国に大きく後れを取ってきた。

 だがスマートフォンの価格が下がり、低価格のモバイルサービス・プロバイダーが高速通信の3Gネットワークを本格展開する準備が整った今、インドはパソコンを飛び越えて携帯端末のインターネット革命で先頭に立つ勢いだと、経営コンサルタント会社マッキンゼーは見ている。

 大きな変化が迫っていると、マッキンゼーのデリー支社の幹部、ラックスマン・ナラシムハンは言う。スマートフォンの普及でメディア・ビジネスが変わり、企業は新しいマーケティング戦略への転換を迫られ、ネットバンキングやeコマースも爆発的に拡大する。インドのデジタルサービス市場は、2015年までに4倍増の200億ドルに増加する可能性があるという。

 それも「インフラ不足の解消を求めるエネルギーと端末の値段の低下によって、パソコンを飛び越えて拡大する可能性がある」と、ナラシムハンは言う。

 現在、インドでインターネットを利用している人はたった7%。32%の中国や77%のアメリカと比べてはるかに見劣りがする。携帯でネットサービスを利用するインド人となると、1%にも満たない。だがマッキンゼーは、それが変わると主張する。

 グーグルの携帯用OSアンドロイドのおかげもあって、スマートフォンの価格は125ドル以下に下がっており、今後さらに安くなるとみられる。パソコンよりも使いやすい携帯端末が、かつてなく手ごろな値段で広くインド社会に行き渡るということだ。

インドの携帯ネット利用者は4.5億人に

 携帯サービスを提供する企業は、モバイル用に革新的なデータ利用料を設定し始めている。マッキンゼーはこれによって、インドのネット利用者が、現在の8100万人から2015年までに5倍の4億5000万人に達すると予測している。

 一方、世界の大手各社は識字率の低いインドでのウェブ利用を促進するため、音声をテキスト化したり、ウェブ上のテキストを音声変換する技術を開発している。「こうした解決策が一度に普及するのははうれしい偶然だ」と、コンサルティング会社「知識社会センター」のアディティヤ・デブ・スードは言う。「ちょうど農村地帯へ高速携帯通信が普及していくタイミングと重なる」

 インド人は、ネットアクセスなしでも日に平均5時間近くデジタルのコンテンツを視聴しており、都市部の住人の4分の3は月にそうしたコンテンツに少なくとも1ドルを支払っている。不正にダウンロードしたコンテンツを、業者がケーブルや無線通信で客の携帯電話に送信している場合が多いのだが。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中