最新記事

テクノロジー

タブレットPC時代の大いなる不安【前編】

新世代PCはより小さくより携帯しやすく通信も容易になるが、ユーザーとしていやな予感もする

2011年2月15日(火)18時35分
ファーハッド・マンジョー(オンライン雑誌「スレート」のテクノロジー担当コラムニスト)

新時代へ グーグルの最新OS「Honeycomb(ハニカム)」を搭載したモトローラXOOM Beck Diefenbach-Reuters

 これから6カ月は、パソコンの未来の土台を作る重要な6カ月になる――先週、米ブログ「ダイアリング・ファイアーボール」で、ジョン・グルーバーはこう予言した。タブレット型PCの隆盛が、ついに「ポストPC時代」の始まりを告げるのだ、と。

 iPadは登場からわずか1年未満で、アップルの売り上げの17%を占めるようになった。マックからの売り上げとほぼ同じだ。近いうちに新型iPadも発表される見通しで、今後タブレット型PCがiPhoneに次ぐ主力商品になるのは間違いなさそうだ。

 アップル通で有名なグルーバーは、今年中に2つの新型iPadが発表されるとみている。1つはカメラを搭載したiPad2で、2カ月以内にお目見えするという。もう1つはディスプレイの解像度を高めたiPad2で、秋頃の発表が予想される。

 ライバルも負けじと必死だ。2週間前、グーグルは携帯電話用OS(基本ソフト)である「アンドロイド」をタブレット用に最適化した「Honeycomb(ハニカム)」を発表。このOSを搭載した初のタブレット機「モトローラXOOM」は今月中にもアメリカで発売される予定だ(価格は800ドル)。

 ヒューレット・パッカード(HP)も先週、携帯電話の新機種(大型サイズの「Pre3」と小型サイズの「Veer」)と、タブレット機「TouchPad」を発表。半年以内に売り出す予定だ。これら新製品には、パーム社が開発した最高性能のOS「ウエブOS」が搭載されている。

マイクロソフト・ノキア提携の狙い

 HPは世界で最も多くウィンドウズ搭載型PCを販売している。そのHPが、ウエブOSをプリンターやノートパソコン、デスクトップPCにも搭載すると決めたことは、時代がPCの先へ進もうとしているというグルーバーの主張を裏打ちするものだ。

 一方、ノキアのCEOステファン・エロップは先ごろ従業員に対し、同社は「焼け落ちるプラットフォーム」に立っていると訴えた。スマートフォン時代の争いに敗れた同社が生き残るには「勇ましく大胆な」挑戦が必要だ、と。そのうえで彼が発表した新計画は、マイクロソフトと提携し、「ウィンドウズPhone」OS搭載機種を同社のスマートフォン製品の軸にするというものだ。

 こうした各社の動きを総じてみれば、携帯用OSが業界全体を圧倒しようとしていることが分かる。大企業は今後の大きな収益源になるだろう携帯電話とタブレット機に力を注ぎ、パソコンからの収益の比率はかつてなく小さくなるだろう。

 驚くことではない。アップルとグーグルは何年も前から携帯デバイス第一主義を貫いている。しかしHPのウエブOS全面導入や、新型OSをノキアに強力に売り込んだマイクロソフトの動きからは、PCビジネスに深く根ざした企業でさえ未来に備えていることが分かる。その未来とは、ノートパソコンではなく「iPad的」な時代だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、ロシアに来週の和平協議開催を提案=ゼレ

ワールド

ウクライナ、米国からのドローン投資と大量購入協議=

ワールド

シリア南部で衝突激化、暫定政府は停戦実施に苦慮

ワールド

参院選きょう投開票、与党の過半数維持なるか 関税交
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 2
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞の遺伝子に火を点ける「プルアップ」とは何か?
  • 3
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 4
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 5
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 6
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 7
    日本では「戦争が終わって80年」...来日して35年目の…
  • 8
    【クイズ】世界で1番売れている「日本の漫画」はどれ…
  • 9
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 10
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 7
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中