タブレットPC時代の大いなる不安【前編】
新世代PCはより小さくより携帯しやすく通信も容易になるが、ユーザーとしていやな予感もする
新時代へ グーグルの最新OS「Honeycomb(ハニカム)」を搭載したモトローラXOOM Beck Diefenbach-Reuters
これから6カ月は、パソコンの未来の土台を作る重要な6カ月になる――先週、米ブログ「ダイアリング・ファイアーボール」で、ジョン・グルーバーはこう予言した。タブレット型PCの隆盛が、ついに「ポストPC時代」の始まりを告げるのだ、と。
iPadは登場からわずか1年未満で、アップルの売り上げの17%を占めるようになった。マックからの売り上げとほぼ同じだ。近いうちに新型iPadも発表される見通しで、今後タブレット型PCがiPhoneに次ぐ主力商品になるのは間違いなさそうだ。
アップル通で有名なグルーバーは、今年中に2つの新型iPadが発表されるとみている。1つはカメラを搭載したiPad2で、2カ月以内にお目見えするという。もう1つはディスプレイの解像度を高めたiPad2で、秋頃の発表が予想される。
ライバルも負けじと必死だ。2週間前、グーグルは携帯電話用OS(基本ソフト)である「アンドロイド」をタブレット用に最適化した「Honeycomb(ハニカム)」を発表。このOSを搭載した初のタブレット機「モトローラXOOM」は今月中にもアメリカで発売される予定だ(価格は800ドル)。
ヒューレット・パッカード(HP)も先週、携帯電話の新機種(大型サイズの「Pre3」と小型サイズの「Veer」)と、タブレット機「TouchPad」を発表。半年以内に売り出す予定だ。これら新製品には、パーム社が開発した最高性能のOS「ウエブOS」が搭載されている。
マイクロソフト・ノキア提携の狙い
HPは世界で最も多くウィンドウズ搭載型PCを販売している。そのHPが、ウエブOSをプリンターやノートパソコン、デスクトップPCにも搭載すると決めたことは、時代がPCの先へ進もうとしているというグルーバーの主張を裏打ちするものだ。
一方、ノキアのCEOステファン・エロップは先ごろ従業員に対し、同社は「焼け落ちるプラットフォーム」に立っていると訴えた。スマートフォン時代の争いに敗れた同社が生き残るには「勇ましく大胆な」挑戦が必要だ、と。そのうえで彼が発表した新計画は、マイクロソフトと提携し、「ウィンドウズPhone」OS搭載機種を同社のスマートフォン製品の軸にするというものだ。
こうした各社の動きを総じてみれば、携帯用OSが業界全体を圧倒しようとしていることが分かる。大企業は今後の大きな収益源になるだろう携帯電話とタブレット機に力を注ぎ、パソコンからの収益の比率はかつてなく小さくなるだろう。
驚くことではない。アップルとグーグルは何年も前から携帯デバイス第一主義を貫いている。しかしHPのウエブOS全面導入や、新型OSをノキアに強力に売り込んだマイクロソフトの動きからは、PCビジネスに深く根ざした企業でさえ未来に備えていることが分かる。その未来とは、ノートパソコンではなく「iPad的」な時代だ。