最新記事

働き方

大失業時代でも「週4時間で稼げる」か

バブルで皆が働き過ぎだった時代に「週4時間労働の勧め」を説いてウケた著者に聞く、今どき絶対ありえなそうな短時間労働の実現法

2010年1月13日(水)17時23分

そもそも職がない 09年9月、サンフランシスコのジョブフェアで列に並ぶ求職者たち Robert Galbraith-Reuters

 失業率が2桁で高止まりし、およそ1500万人のアメリカ人が職を失うなか、雇用の安定は最も関心を集めている問題の一つ。この経済状況下で、労働者にはこれまでになく起業能力と働き方の工夫が求められている。

 07年の著作『なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?』(邦訳・青志社)を拡大、アップデートした09年版を出版した起業家で作家のティモシー・フェリスは、そう話す。著作の中で、フェリスは読者にこう勧める。電子メールのチェックは週1回に。会議は避け、電話はやめ、できるかぎり自宅で仕事をすること。この断固とした時間管理術によって、旅行や趣味を楽しむ時間がつくれる。
 
07年に出版された彼の著作はベストセラーになった。会社の歯車にならず、より良いワークライフバランスを考えようという彼のアイデアに、働き過ぎのアメリカ人が共感したからだろう。

 経済危機の後、状況は劇的に変わった。アメリカ人は今、職種を問わず必死になって働き口を求めている。持説の短時間労働が今の経済状況下でどんな意味をもつのかについて、本誌ナンシー・クックがフェリスに話を聞いた。

    

――失業率が10%の現在でも週4時間労働を勧めるか。

 結論から言えば、イエスだ。今でも多くの人が、週40時間以上は働かないようにしたり、あるいは労働成果を高めつつも週80時間から40時間に短縮しようとしている。私が著書で提唱している理論と同じだ。複雑に考える必要などない。無給の過剰労働を減らすことができれば、ライフスタイルに劇的な変化が訪れる。

 私が07年版で問いかけた質問は、もはや仮説ではなくなった。退職という選択肢がなくなってしまったらどうするか、などという点だ。周りをみれば、確定拠出型年金が30〜40%下落したという人も多い。退職後のプランを変更せざるをえなくなくなっている。2年前なら考えもしなかったことだろう。

 私の著作は根本的に、より良い結果について述べている。ある人にとっては、それは経済的な制約から逃れたり仕事場から解放されることだろう。またある人にとっては、会社にとってなくてはならない人物となることかもしれない。すべてうまくいかないような経済状況の今だからこそ、普通とは違うことを試してみる価値がある。

――くどいかもしれないが、人々が職を失うのを心配しているこの時代に本気で週4時間労働を提唱するのか。

 重労働を否定するつもりはない。ただし、時間が正しく使われた結果であればの話だ。つまり、スケジュールをきちんと管理したりパソコンに向かう時間を見直すなどの基本的なことをした結果であれば良い。

(労働時間とは)カロリー計算と同じようなもの。さまざまなビジネスツールにどれほどの時間を費やしているか、人は上手く判断できていない。もしそれを正しく計ることができれば、大きな変化につながるだろう。

――著作のかなりの部分で起業の仕方について説明しているが、景気後退でその見方に変化はあったか。

 試す価値のある実験的な提案が2つある。1つは(会社勤めをしなくても)自動的に月収が得られる収入源をつくること。月収の目標額は退職後に好きなことが自由にできるぐらいが必要だろう。収入の心配がなくなれば、自分のしたいことに集中できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中