最新記事

米社会

オバマ嫌いで活況に沸く銃業界

2009年10月29日(木)18時45分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

「被害妄想型特需」の終焉が見えた

 消費支出が伸び悩んでいるこの時期でも、同社は順調に売上を伸ばしている。理由のひとつは目論見書でも触れられている通り、大統領選でオバマが共和党のジョン・マケイン候補を打ち負かしたことで、銃のオーナーたちが震え上がったからだ。

 目論見書の55ページにはこうある。「現在のマクロ経済的環境にもかかわらず、売上全体で見るとわが社は大きなマイナスの影響を受けていない。アメリカで政権交代が起き、新政権が銃規制の強化を支持するかもしれないと消費者が懸念したために、わが社の一部製品への需要が増えたのだと考えられる」

 FOXニュースが喧伝する圧政と独裁の時代の到来は、自由の国アメリカにとっては悪いニュースなのかもしれない。だがフリーダムにとってはありがたい話だ。

 消費支出全般が低調ななかで、この1年の銃器と弾薬の販売利益は伸びている。今年1~6月のフリーダムの銃器と弾薬の売上は前年同期比でそれぞれ41・6%と27・1%増(ただし売り上げ増の一部は企業買収によるもの)だった。

 フリーダムはそれほど大きな債務を抱えていないし、手元資金は豊富。販売利益は増加しており、潜在的なビジネスも成長基調にある。投資ファンドの傘下にある会社としては珍しいことで、これならIPOは成功するに違いない。

 だがIPOをやるなら急いだほうがいい。戦争というものの性質上、世界各地の軍や武装勢力の銃や弾薬への需要は今後も安定しているだろう。だが一般消費者向けの市場はもっと不安定だ。

 オバマが銃の没収といった過激な銃規制のプランを持っていないことが明らかになってきたため、被害妄想的な銃購入ブームにも終わりの兆しが見えてきた。FBIのデータを見ると、9月の身元調査件数の増加率は前年同月比で12.3%に落ち着いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税の影響、かなりの不確実性が残っている=高田日

ワールド

タイ経済成長率予測、今年1.8%・来年1.7%に下

ワールド

米、半導体設計ソフトとエタンの対中輸出制限を解除

ワールド

オデーサ港に夜間攻撃、子ども2人含む5人負傷=ウク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中