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アメリカ経済

米グリーン雇用、統計上の実績はゼロ

2009年7月29日(水)18時36分
ダニエル・ストーン

――景気対策は経済を再活性化するというふれこみだったが、グリーン雇用については数字上問題があるようだ。大統領は400万以上の雇用を創出すると言ったが、雇用の喪失はそれよりずっと多い。

 数字の問題ではなく見方の問題だ。景気対策全体が7870億ドル規模であるのに対して、グリーン経済への配分は600億ドルに過ぎない。それでもグリーン経済は景気回復の中核的役割を果たしている。ただしそれは、より大きな努力の一部なのだ。

 風力発電機の設置に多くの人員が必要ないのは確かだ。だがその建設自体には多くの人手が必要だし、自動車26台分の鉄鋼に相当する8000個の部品が必要となる。

 風を資源として最大限に利用するには、こうした風力発電機を多数設置する必要がある。未来の雇用を作るには、未来の商品を作り始めなければならない。われわれが作る数十億ドルの価値ある商品はクリーンエネルギーだ。

――そうはいっても風力発電機をつくる工場の運営に、そんなに多くの人は必要ないのでは?

 まずは風力発電機を製造し、設置し、メンテナンスをしなければならない。さらに太陽光やバイオ燃料、地熱を利用した発電設備の製造・設置もしていく。このように(グリーンな技術が)波及効果を生んでいくのだ。

 同じことがエネルギー効率の分野でもいえる。例えば住宅。断熱材を入れる作業員がいるなら、断熱材の作り手も必要になるはずだ。新しいボイラーや暖房を設置するなら、誰かがそれを作らなければならない。それが波及効果であり、中小企業の活性化と省エネの両方につながる。

──経済と地球を同時に救うことはできないという言う人は多い。投資促進や減税による成長促進も温室効果ガスの削減も可能だが、両方を同時にすれば、どちらの効果も薄まるのではないか。

(急に咳き込む)

――大丈夫ですか?

 君が誤った見方を話すから息が詰まってしまった(笑)。そのような選択を強いるのは明らかに誤っている。「子供と孫のどちらが大切か」と聞いているようなものだ。環境汚染を放置して経済成長を促すのか。環境汚染を防いで経済の悪化を招くのか。こうした選択はまったくの誤りだ! 経済パフォーマンスは、環境パフォーマンスを改善することによっても高めることができる。

――確かにそうだが、成果がゼロの状況でそれを国民に納得させるのは難しいのでは?

 いいかい、そういう議論はいつも間違いだった。大気浄化法が初めて議論されたとき、大気汚染を防ごうとすれば経済に打撃を与えるといわれたものだ。だが実際にそのルールが明らかになると、アメリカの企業は瞬く間に大幅な経費削減を実現し、経済は上向いた。歴史が示している。ルールを明確にして技術革新を促せば、私たちはいつも期待を上回る成果をあげるものだ。

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