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2009.07.03

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今こそ炭素生産性のクリーン革命を

CO2による新指標を軸とした「エネルギー版産業革命」は達成不可能な目標ではない

2009年7月3日(金)12時34分
ジェレミー・オッペンハイム、エリック・バインホッカー、ダイアナ・ファレル

脱石油へ 再生可能エネルギーや原子力発電の果たす役割は?(英ディドコット発電所) David Goddard-Getty Images

 エッフェル塔からそう遠くないパリの賃貸オフィスで、国際エネルギー機関(IEA)のアナリストが、石油生産と温室効果ガス排出量の数字をにらみ続けている。

 彼らの仕事は、OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国のエネルギー供給を監視すること。書き上げる報告書には、たいてい無味乾燥な専門用語が並ぶ。

 そんななかに一つだけ、なんとも不吉な響きをもちはじめた言葉がある----「従来どおり」。最近はこの言葉が、別の意味に読める。「世界の終わりが近づいた」と。

 これまでもIEAは緊迫感のある提言を行ってきた。自動車利用や工場の稼働の仕方を大きく変え、グローバル経済のあり方を根本から考え直さなくてはならないと主張してきた。最新の包括的な報告書では「エネルギーの供給と利用法に関するグローバル革命」が必要だと宣言している。

 だが金融危機が世界を襲ったことで、各国の政財界の指導者たちの間には「今は環境対策どころではない」という空気が強まってきた。EU(欧州連合)ではイタリアや東欧諸国の苦境によって、すでに合意した環境保護行動案が崩壊しかねない。

 アメリカでは、金融機関の破綻が相次ぎ、住宅の差し押さえと失業者が増えたことで、大胆だったベンチャーキャピタリストもすっかり臆病になっている。数カ月前なら、地球にやさしい技術を開発する巨大プロジェクトに資金を出そうという投資家はけっこういた。だが今は、投資規模の縮小は免れず、下手をするとまったく資金が集まらないこともあるという。

 中国の指導者は、北京五輪の期間中は環境保護に細かく気を配っていた。しかし経済成長率が1けた台に落ち込みそうな今は、もう環境対策など忘れたいと思っているかもしれない。

 絶望的と言いたくなるほどの暗いムード。だが、そんななかにも力強い声が聞こえている。今こそIEAが求める「グローバル革命」に着手すべきだ、という声である。数十年後に起こりうる地球の破滅を防ぐためだけではない。世界経済を不況から脱出させ、今より強固な基盤をつくり上げるはずみをもたらすかもしれないからだ。

 イギリスのゴードン・ブラウン首相、フランスのニコラ・サルコジ大統領、そしてアメリカのバラク・オバマ次期大統領は、潘基文国連事務総長が「緑のニューディール」と呼ぶ取り組みを支持している。フランクリン・ルーズベルト米大統領が大恐慌期に繰り出した経済再生プログラムの手法を借りて、グローバル経済の再建と再構築をめざそうというものだ。

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