コラム

フェイスブックはどのSNSより多くの医者に使われている?(パックンの風刺画コラム)

2021年11月10日(水)18時33分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
マーク・ザッカーバーグ(風刺画)

©2021 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<内部告発によって多くの問題が指摘されているフェイスブックだが、問題から目をそらす姿勢はかつての「ラクダ」を思わせる>

フェイスブックのロゴ入りTシャツに、この髪形と耳......創業者のマーク・ザッカーバーグだ!

でも、壁に投影されているのはたばこをくわえ、工作員の格好をしているラクダのシルエット。そしてザッカーバーグはMore doctors use Facebook than any other social media platform!(どのSNSよりもFacebookを使っている医師が多い!)と、訳の分からないことを言っている。

では、訳が分かるようにしよう!

1930~50年代後半まで、多くのたばこメーカーは「お医者さんが薦めるブランドだ!」と、自らを誇っていた。その頃、「他のブランドよりキャメルを吸っている医師が多い」というキャッチコピーを生み出したのが、あのラクダマークのブランド。

もちろん、無根拠ではない! ちゃんと聞き込み調査に基づいている。というのは、キャメルブランドのたばこを渡してから、医師に「吸っているブランドは?」と聞いたのだ。まあ、無根拠同然だね。

実は、50年代から喫煙と肺癌の関係性は少しずつ解明されてはいた。それでも、大手メーカーはその事実を否定しながら商品を売り続けた。子供にも、妊婦にも。もちろん、真実を公表し、商売の方法を改めたほうが消費者のためになったはず。

しかし、そんな英断は下さなかった。その理由を当時の責任者に聞くことができたとしたら、きっとこう答えるだろう。「黙って売り続けるほうが楽だ(ラクダ)......キャメルだけにね!」

不都合な情報に目をつぶって商売を続けたのがザッカーバーグとの共通点。先日アメリカ上院で証言した内部告発者によると、フェイスブック(10月にメタ社に社名を変更)は、サイトが人身売買に使われていること、ヘイトスピーチの温床になっていること、新型コロナウイルスなどの反ワクチンの陰謀論を拡散する場になっていること、傘下の写真共有アプリ、インスタグラムが若い女性の身体的なコンプレックスを助長していることなどを内部調査で把握していたという。

そうしたharmful effects of FB(フェイスブックの有害な影響)を知りながら、ビジネスを続けたようだ。例えば、社内のプレゼンでインスタグラムが若い女性に悪影響を与えていることに触れつつも、子供向けインスタグラムの開発を進めていたと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた(その後、批判を受け開発は一時停止)。

この先、フェイスブックの利用者はどう判断するのかは分からないが、ザッカーバーグ本人は内部告発の内容を全面否定している。たばこの健康への害が判明して禁煙した人は大勢いたが、彼らと違って、ザッカーバーグは一切「すいません」と言わないようだ。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

JAL、今期の純利益7.4%増の見通し 市場予想上

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお

ワールド

日米2回目の関税交渉、赤沢氏「突っ込んだ議論」 次

ワールド

原油先物が上昇、米中貿易戦争の緩和期待で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story