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コラム

風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
「脱亜」できない日本の受難...海を渡って飛んでくる、隣国の黄砂やミサイル

©2023 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<地政学的な脱亜ができない日本は、これからどうやって民主主義のオアシスを守りながら、隣国の黄砂やミサイルを防ぐことができるか>
ポストコロナの北京で先日、過去最悪レベルの黄砂が発生した。その一部が風に乗って日本に運ばれ、夕刻の空がいつもより黄色く染められた。その様子を見ながら、感慨深く思った。日本はどうしても「脱亜」できないのだ、と。
「脱亜論」は明治時代の思想家・福沢諭吉が1885(明治18)年に新聞の社説で書いたものだ。その内容は以下のとおりである。西洋文明ははしかの流行のようなもので、防ぐ方法はない。ただし不幸なことに、近隣の中国や朝鮮などの国はその西洋の近代化文明を拒否し、昔のまま何も変わらない。こういった進歩を停止したアジアの隣国が西洋文明を受け入れるのを待つよりも、さっさと欧米列強の仲間に入ったほうがよい──。
近現代の日本は、確かに脱亜の道をまっしぐらに進んできた。政治体制も、科学技術も、生活スタイルも、そして論理的な思考方法までも欧米文明と抱擁する先進国になった。だが、それでも本当の意味での脱亜は一向にできていない。冒頭の黄砂はその一例だ。日本は引っ越しができない。日本がアジアのオアシスなら、隣の中国や北朝鮮など独裁政権の国はまるで砂漠のような存在である。隣の砂漠をなくさなければ、黄砂、そしてミサイルはいつでも飛んでくる。囲まれたオアシスだけがいつまでも無事でいられるはずはない。
かつて天安門広場で発生した民主化運動は、中国を専制国家という砂漠から民主主義のオアシスに変身させる絶好のチャンスだったが、残念ながら失敗した。その後、アメリカや日本を含む民主国家は対中関与政策を実施した。貿易や投資を通じて中国を欧米の価値観に取り込み、徐々に民主化しようとしたのだが、経済が飛躍的に発展した結果、中国は独裁をかえって強化した。関与政策、つまり砂漠の緑化計画は完全な失敗に終わった。
隣国の砂漠を根治できないと、黄砂はいつでもはるばる海を渡って飛んでくる。地政学的な脱亜ができない日本は、これからどうやって民主主義のオアシスを守りながら、隣国の黄砂やミサイルを防ぐことができるか。ミサイルが日本に落ちてからでは遅いのだ。
ポイント
脱亜論
1884年にソウルで起きた親日派クーデターの失敗に失望した福沢諭吉が執筆した。当時は話題にならず、1980年代に歴史教科書問題が起きるとアジア侵略の論理として注目された。
黄砂
中国語で沙塵暴(シャーチェンパオ)。中国大陸内陸部のゴビ砂漠や黄土高原で風によって巻き上げられた土壌・鉱物粒子が飛来する現象。過放牧や農地転用、森林減少が原因の1つとされる。

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