コラム

ファーウェイの次に排除されるのは微信(WeChat)?

2019年02月14日(木)18時10分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

The New Great Wall / (c)2019 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<安全保障上の懸念から欧米諸国でファーウェイ製品が排除されているが、中国政府の検閲は人気のメッセージアプリや支払いアプリにも及んでいる>

中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が製品の安全保障上の懸念などの理由で欧米諸国から排除されている。その仲間のオーストラリアは先日、ファーウェイだけでなく、中国の人気ナンバーワンSNSの微信(WeChat)に関して「総選挙を前に、中国政府のプロパガンダを流す恐れがある」と、自国民に警告を出した。

微信は中国大手ネット企業、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)が作った無料のメッセンジャーアプリで、18年には月間ユーザー数が10 億人を超えた。これほど成長した秘密は日常生活の支払いのほとんどが決算できる微信支付(WeChat Pay)。国内はもちろん、海外に暮らしている中国人も中国国内と気軽に連絡できるため、みんな微信を利用している。

ただ周知のとおり、中国のネット検閲は厳しい。全てのSNSには検閲があり、政府の意図に従って言論統制しなければならない。ちょっとした「敏感詞」(中国政府がタブー視する言葉)が投稿の中に出てくれば、すぐに削除、ブロックあるいはアカウントの永久封鎖が待っている。

オーストラリアの微信ユーザーは現在150万人いる。このように中国政府によって厳しく統制されている微信が、もし中国政府の指示どおりに特定候補者を応援、あるいは批判したら確かにこれほど困ることはない。18年の3月にはオーストラリア国防省が情報漏洩を恐れて、職員や出入り業者の微信使用を禁止した。中国系住民による土地購入や政界進出に対して、オーストラリア人は今とても敏感になっている。

ただし微信を利用している中国人ユーザーは政府の言論統制が厳し過ぎるせいか、政治には無関心だ。むしろ稼ぐことには熱心で、微信では「代理購入」というビジネスが横行している。事実上の個人輸入だが、あまりに規模が大きくなり脱税が問題になっていた。このように横行する代理購入やそれ以外の無許可のネットビジネスを規制するため、1月1日から中国政府は中華人民共和国電子商務法を施行した。

言論の検閲に加えて、ビジネスまで厳しく取り締まる......中国とその他の世界の間にある「壁」は、ネットの世界でも大きくなるばかりだ。

【ポイント】
オーストラリア人の対中感情

17年、オーストラリアの野党議員が中国人から金銭支援を受けて、南シナ海問題で中国寄りの発言をしていたことが発覚。18年には大学への寄付や企業買収によって中国が影響力を強める様子を描いた大学教授の著書『静かなる侵略』が話題に。中国系住民による土地買収や政界進出にも拒否感が広がる。

<本誌2018年02月19日号掲載>

※2019年2月19日号(2月13日発売)は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ラガルドECB総裁、BISから14万ユーロ報酬 内

ワールド

ゴールドマン、26年第4四半期の原油価格見通しを引

ワールド

イスラエルの中東地域所有権巡る米大使発言、中東・イ

ワールド

違法判決の米関税、24日に徴収停止 米税関当局発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中小企業の「静かな抵抗」
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story