コラム

アマゾン誘致は「身を売る」覚悟で

2017年11月15日(水)10時20分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラム二スト、タレント)

©2017 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE

<アマゾンの第2拠点建設に全米各都市が誘致合戦。なりふり構わぬその姿は、まるでハリウッドでセクハラ被害に遭う新人女優たちのように悲しい>

オンライン通販最大手アマゾンが第2本部の建設地をコンペ形式で決めると発表してからの候補地同士の「誘致合戦」はすごかった。10月中旬の締め切りまでに238件の提案があったようだが、バニティ・フェア誌などが伝えたように行き過ぎも目立った。

ミズーリ州カンザスシティーの市長はアマゾンに商品1000個を注文し、レビューを書いた。全部5つ星だったのは偶然か。15ドルの風鈴は「全世界が僕のためだけに歌ってくれているように感じる」というおべっかぶり。誘致が失敗したら全部返品するの?

ニュージャージー州は単刀直入に70億ドル分の特別減税を提案。アマゾンで注文ではなく、アマゾンを注文したつもりなのだろう。ジョージア州の小さな町ストーンクレストは、町名をアマゾンに変える案を出した。町長はアマゾンCEOのジェフ・ベゾスにするらしい。ブラジルに行かなくてもアマゾンに暮らせるってことだ。といっても、ジョージアだけどね。

風刺画で擬人化されているペンシルベニア州ピッツバーグ市(PGH)も頑張っている。あるレストランはアマゾンの社員全員にサンドイッチをプレゼントすると申し出た。しかし、新本部ができたら市内の家賃が上昇し、10年間で1万ドル近く多く払う人が出るとの試算も。サブプライムの次はアマゾンプライムで不動産バブルが起き得るわけ。そこまでして誘致する必要はない、という主張もある。

さて、次に触れるのは力とセックスの関係性を示す比喩的表現。言語や文化への理解を深めるために必要なので、実に不愉快な話だがお付き合いください――。Casting Couchというのは、映画などのキャスティング・ディレクターがオーディションに来た女優に、出演を交換条件にセックスを強要するときに使うソファのこと。そこに座っているピッツバーグ市はアマゾン誘致のために、身を売ろうとしているわけ。

セックスが力関係を象徴するものとして、こんなふうに表現されるのは悲しいが、それが現実。大物プロデューサーのハービー・ワインスティーンが数十年にわたり多くの女優にセクハラや性的暴行を繰り返した疑惑が出ている今こそ、こんな表現も、その裏にある実態もアメリカからなくしたい。

【ポイント】
HQ2 AUDITIONS 第2本部オーディション

PGH ピッツバーグ( Pittsburgh)

RESUME 履歴書

OK...THIS IS BEGINNING TO MAKE ME UNCOMFORTABLE!
「ええと......なんだか落ち着かないんですが」

<本誌2017年11月21日号掲載>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ石油施設の攻撃縮小巡り支援国から「シグナル」=ウ

ビジネス

金融政策は「良い位置」、二大責務間に緊張も=FRB

ビジネス

ミランFRB理事「約1%の利下げ必要」、原油高でも

ワールド

G7、エネルギー市場安定化に向けあらゆる措置を講じ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 10
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story