コラム

アメリカ社会は「大谷翔平騒動」をどう見ている? 有名コメンテーターでさえ「大谷も有罪」だと信じている理由

2024年04月03日(水)16時50分

newsweekjp_20240403022702.jpg

大酒飲みで女遊びが激しかったベーブ・ルース BETTMANN/GETTY IMAGES

私たちの大半が(金額は少なくても)ギャンブルをやっている以上、アメコミのヒーローみたいな大谷がギャンブルに手を出しても不思議ではない。向こう10年で総額7億ドルの契約を結んだ男なら、450万ドルくらいの損失は何でもないだろう。そう思ってしまう。

一方で、アメリカ人は仕返しをしたがる。外国人によく指摘されるように、もともとアメリカ人は「血の気が多い」。ある有名なコメンテーターは、いつも「大谷を信じたい、ああ、大谷を信じたい!」と繰り返しているが、心の底では大谷も有罪だと信じているらしい。その理由は、大谷の代理人が被害届の提出先について回答を拒んでいるからだ。

その背景には、このような極悪非道な窃盗被害に遭った者は可能な限り厳しい復讐を望み、全ての関係当局に通報し、犯罪者に刑罰の嵐が降り注ぐことを望んでいるはずだという思い込みがある。

通訳に完全に依存した理由

だから記者会見での大谷の冷静な対応に、多くのアメリカ人は困惑している。親しい友人のひどい裏切りに遭った人間が、どうしてあれほどクールに振る舞えるのか、理解に苦しんでいる。

大谷をだました人物は、文字どおり彼の声であり耳であり、アメリカや他の非日本語圏の人々に対して大谷の存在を代弁していた。

大谷は、自分が発する言葉だけでなく、自分に聞こえてくる言葉や意味など、ほとんど全てを水原に依存していた。それで済むのなら、余計なことは考えない。異国で生きていくには、そのほうが楽だ。

理解できない言語を聞かされるのはとてつもない負担になる。意味不明な言葉を5分間聞くだけでも、私は疲れてしまう。企業とのスポンサー契約を管理し、チームメイトとの交流やファンへの対応から野球の戦術や微妙なゲーム戦略まで、大谷が日々直面する猛烈な知的負担を想像するだけで頭が痛くなる。

そんな苦痛は耐え難いから、どうしても通訳に頼りたくなる。自分が他人からどう見られるかも、自分が世界をどう見るかも、全ては通訳の目と口に任せる。だがそんな状況になれば、心理的には通訳を無条件で信頼するしかないだろう。

通訳に間違いがあるかもしれないと思えば胸が騒ぎ、不安になる。通訳に悪意や、誠実さに欠ける傾向があるとしたら、これまでの全てのやりとりは何だったのかと疑いたくなる。この会話を信用していいのか? 私はだまされているのではないか? そんな不安を抱えて生きるより、通訳に全幅の信頼を寄せて生きるほうがずっと楽ではないか。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾ

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story