コラム

大統領就任まで1週間、バイデンを待つ 3つの歴史的難題

2021年01月13日(水)16時30分

求められる資質 長い経験と調整力にたけたバイデンは今 の時代に最も適したホワイトハウスの主になるかもしれない MIKE SEGARーREUTERS

<熟練の手さばきで3つ全てに対処できれば米史上最も優れた大統領の8人に入るが、2つに失敗すれば平均以下の大統領と評価される>

100年に1度の感染症の大流行、数十年に1度の経済危機、半世紀に1度の抗議運動の高まり、そして南北戦争以後最悪の社会的分断──これほどの歴史的な課題を抱えて就任するアメリカ大統領は、ジョー・バイデンが初めてだ。

しかもバイデンは現職ドナルド・トランプに一般投票で700万票以上の差をつけて勝利したのに、その勢いは議会選にまでは及ばなかった。連邦上下両院の与野党勢力はほぼ拮抗し、州議会レベルでは依然共和党が強い。バイデンはいま世界の指導者の中で最も重責を担っているばかりか、1860年の大統領選に勝ったエイブラハム・リンカーン以来の難局に立っている。

20201229_20210105issue_cover200.jpg

だが、この不可能に見える仕事をこなすのにバイデンは最も適任かもしれない。もし実験室で理想の大統領をつくり出すことができたなら、バイデンのような資質を備えた人物が生まれるだろう。

まず彼は、自分は次の大統領までのつなぎ役にすぎず、社会の傷を癒やし、安定をもたらしたいと語っている。トランプ支持者や共和党上層部を悪者扱いすることも拒んだ。

彼は政治家としてのキャリアの大半を政府の高い地位に就くことなく、議会での取引に費やしてきた。副大統領だったときも、共和党との調整が主な仕事だった。イデオロギー的には常に中道派だったし、経験も十分にある。大統領就任前の選出公職の経験年数は歴代でも群を抜く1位。就任後の仕事ぶりに期待を抱かせるだけの経歴だ。

筆者の好きな格言に「圧力がなければダイヤモンドは生まれない」というものがある。バイデンが熟練の手さばきで以下の3つの課題に対処できれば、米史上最も優れた大統領の8人に入るだろう。だが課題のうち2つに失敗すれば、平均以下の大統領と評価される。どの課題にも対応できなければ、アメリカそのものがどん底に沈むかもしれない。バイデンが直面する3つの大きな課題を見てみよう。

1.新型コロナ対策

バイデン政権の最初の半年は、当然ながら新型コロナウイルス対策にかかりきりになる。トランプ時代の政権運営と決別し、能力主義や専門性がいま一度日の目を見る。

バイデンは当選直後、最も優れた専門家たちをコロナ対策チームのメンバーに起用し、コロナ禍を最重要課題として挙げた。この点は高く評価できる。次に続くのは感染経路追跡やソーシャルディスタンス対策、ワクチン流通戦略や政府の情報公開の強化だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イラン核問題巡りトランプ氏と協議へ 

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story